2006年04月28日

理想のロボット

映画監督の伊丹万作は映画を作るうえで大切なことを3つ上げています。

@お客を楽しませることができるか
「寅さん」シリーズやインディジョーンズシリーズなんかですね。

Aもうけることができるか
これは、ほとんどの映画製作者が目指していること。

Bどうしても訴えたいか
チャップリンの「独裁者」やドキュメンタリー映画なんかですね。

もちろんB級映画といわれる映画が好きな人もたくさんいるわけで、上記3つにあてはまらない映画はたくさんあります。

ロボットの場合はどうでしょう。あえて3つあげるとすれば、

@人々を楽しませ、豊かな時間を共有することができるか

A人々のニーズに合い、たくさん売ることができるか

B人々の役に立ち、よろこんでもらうことができるか

「タンポポ」や「ミンボーの女」を作った万作の息子十三は、父親の教えを守って(かどうかはわかりませんが)、自分の訴えたいテーマで、人を楽しませ、ヒットする映画を作りました。

ロボットはまだまだ開発途上ですし、作られるロボットも多種多様。
規定することにあまり意味はないかもしれませんが、

作り手の意思がロボットに反映され、役立つことで人々が喜こび、結果としてたくさん売れるロボット

が出てくるのが理想ですね。

もちろん言うは易し。でも伊丹十三にできて、ロボット開発者にできない理由ないと思いますが、どうでしょう。

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2006年04月24日

ロボット適応分野の拡大、或いは市場失敗に備えて

<つづき>

家庭用のロボットを分類すれば、   <( )内は代表的なロボット>

@エンターテインメントロボット(AIBO)
Aホビーロボット(KHR-1)
B見守り・監視ロボット(ロボリア)
C掃除ロボット(ルンバ・ディスカバリー)
D介護・福祉ロボット
E生活支援ロボット

などがあり、現在@からCの分野には、ロボットベンチャーを含め、様々な企業が参入しています。

ただし、多くの人が求めているロボットは、D、Eに代表される「人に役立つロボット」。

経済産業省の「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」も将来の市場や社会的ニーズを満たす「要素技術の開発」を目的にしており、ロボット技術がロボット以外の製品分野(自動車や情報家電など)にも広く波及することを期待しています。

これは、ロボット開発をロボット単体だけにとどめるのではなく、体力のある企業(自動車、エレクトロニクス産業)を巻き込んで、ロボット技術を既存分野に応用させることで基幹産業の国際競争力を強化すると共に、ロボット市場を早期に立ち上げようとするものです。

今後、車や家を含めあらゆる空間がロボット化することを踏まえれば、ロボット単体の開発にこだわるのではなく、ロボット適応分野の拡大を目指す経済産業省のこのプロジェクトは、正しい方向性だと思います。

ただし、経済産業省は、次のように言うことも忘れていません。

「・・・市場の失敗に対応すべく、国として関与すべきミッション
posted by カーサ at 16:14| Comment(0) | TrackBack(0) | ロボティック・ミッション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月21日

チャレンジングなミッション

経済産業省は、ロボット産業を日本の基幹産業のひとつに成長させることを目的に「21世紀ロボットチャレンジプログラム」を2004年からスタートさせています。

@次世代ロボット実用化プロジェクト('04-05 41.3億円)

「愛・地球博」で披露された65種類のプロトタイプロボットと生活及び福祉分野の9種類のロボットの実証試験。

A人間支援型ロボット実用化プロジェクト('05-07 9億円)

福祉・介護ロボットのモデル開発と実証試験。

B次世代ロボット共通基盤開発プロジェクト('05-07 4億円)

ロボットのパーツの共通基盤化技術の開発。

Cサービスロボット市場創出支援事業('06-07 4.2億円)

ユーザーとメーカーが一体で事業に取り組み、成功事例として実用化を目指すもの。

D戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト('06-10 11億円/初年度)

2025年までのロボットの技術戦略マップに基づく、チャレンジングなミッション。

注目は、やはりDです。

これは、政府の総合科学技術会議が決めた今後5年間に集中投資すべき62のテーマのひとつ「ロボット中核技術」を受けて実施されるもので、
将来の市場ニーズと社会ニーズが高いと考えられる
「製造分野」「サービス分野」「特殊環境下での作業」の3分野に特定した、「ステージゲート制度」を採用。
イノベーションを加速させることを目的にステージを2段階に分け、3年後に1分野1研究に重点的に予算を振り向けるというもの。
アメリカの「グランドチャレンジ」に相当する国家プロジェクトです。

達成すべき技術仕様の落とし込みを明確にしていることやステージゲート制という競争原理を取り入れていることも他のプロジェクトとは異なる点ですが、なによりポイントは、
達成したロボットの要素技術をロボット以外の製品分野(自動車や情報家電など)にも広く波及させようとしていることです。

<つづく>




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2006年04月17日

忘れてしまってよいロボット

ここひと月ほど、メーカーや官公庁など多くのロボット担当者に取材する機会がありました。
皆さんまだまだ苦労はあるものの、少しずつ手ごたえを感じている様子でした。

MITの人口知能研究所所長で、iRobot社の創立者であるロドニー・ブルックスは自著「ブルックスの知能ロボット論」で、
今後数年で家庭に入ってくるロボットとして、
スイッチを押せば、あとは忘れてしまってよいロボット
を挙げています。

具体的には、
自動掃除ロボットの変種のような小指ほどの自動埃取りロボットや小型アームで食器を出し入れするキッチン掃除ロボット、また絶えず顔を完全な角度から映してくれる鏡ロボット、などです。

もうひとつは、遠隔存在ロボット

それは現在市販されているロボリア(テムザック社)のように、遠隔操作による見守りや防犯ができることにプラスして、
取っ手付きドア(玄関や冷蔵庫など)の開け閉めができるような、
物理的な作業ができるロボット」のこと。

外からロボットを操作し、自分に代わってロボットに作業させることは、現在の研究室レベルの技術で十分可能ということです。

取材先でも、
留守の時に役立ち、居るときには癒される、又は話し相手になる
ことを、今後の有力なロボットとする研究者が多くいました。

ロボットと暮らす新しい生活は、もうそこまで来ています。


2006年04月14日

かつて、QRIOと呼ばれた「ロボット」

先日、ソニー・インテリジェンス・ダイナミクス研究所が主催するシンポジウムに参加しました。

AIBOをはじめ現在世に出ているロボットは、あらかじめプログラムされた計算に基づいて行動するため、どうしてもパターン化され、「飽き」が生じます。

「飽き」させないためには、ロボットが自ら学習し、経験をつむことで状況に対応できるようになることが必要です。

シンポジウムでは、「QRIO」がすべり台をすべり降りたり、ボールを何度も打ち返したりする実演デモを通して、「インテリジェンス・モデル」と呼ぶ計算モデルをわかりやすく紹介していました。

ただし、その「QRIO」、会場では単に「ロボット」と呼ばれていました。

AIBOの販売中止直後ということもあり、パンフレットでの表記や言い回しに気を使っているのはわかるのですが、「QRIO」がなんだかとても寂しげに見えました。
posted by カーサ at 22:20| Comment(0) | TrackBack(0) | ロボット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月10日

ロボット文化人

夏目漱石の「三四郎」に、東京に向かう汽車の中で広田先生が三四郎に言うセリフがあります。
「熊本より東京は広い。東京より日本は広い。日本より・・・・・日本より頭の中のほうが広いでしょう」。

先日、脳科学者やロボット研究者など、脳に関わる第一人者が発起人となって設立された「脳を活かす研究会 発足講演会」に参加しました。

脳科学は、人間のロボット化=ブレイン・マシーン・インターフェースや認知神経科学に基づく新しい経済学=ニューロ・エコノミクスを生み出し、「脳を活かす」ことで「売れる仕組み」を作る大きな原動力になりつつあります。

現在、東急ハンズの脳に関するコーナーには、脳を鍛えるゲームなど100種類以上の商品があり、また、高齢者や団塊の世代を対象にした「脳を活性化させる」ビジネスも盛んです。

この会の発足理由のひとつに、最近の「脳文化人」出現への危惧があります。

脳文化人」とは、確証のない私見をあたかも脳科学の裏づけがあるかのように公言する一部の科学者のこと。

非科学的で、客観性のない脳情報の氾濫は、一般の人が脳に関して誤った考えを抱く恐れがあり、これまで地道に脳の研究をしてきた科学者にとっては、迷惑千万な話でしょう。

また脳科学が長年、あまり儲かる学問ではなかったため、国の研究予算が削られており、一部の「脳文化人」だけがいい思いをしているというやっかみもあるのかもしれません。

広田先生が言うように、「頭の中は広い」わけで、今後もいろいろな立場の人たちが脳の研究を通してビジネスに携わり、それがロボットの発展にもつながっていくことと思います。

もしかしたら、怪しげな「ロボット文化人」も、すでに出現しているのかもしれませんね。
posted by カーサ at 11:13| Comment(0) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月06日

賛否カップリング

<つづき>
お金の価値というのは、不思議なものです。

例えば100万円するブランドのバッグは、ある人にとってはとんでもなく高い贅沢品と受け取られますが、ある人にとってはこの上なく価値のある、納得できる金額と感じられます。

先ごろ文部科学省が7000万円をかけて100万部発行した「サイエンス・ウォーカー」。
「カップルで楽しむサイエンス」「デートで使える科学ネタ」として、「東京ウォーカー」のとじ込みやコンビニなどで無料配布されています。

やはり賛否両論あるようです。

若者に科学技術に興味を持ってもらためのチャレンジと考えれば、すばらしいことと思うし、税金の無駄使いと思えば、腹も立つというものです。

個人的には、「女子高校生夏の学校」や「サイエンスカフェ」、「科学教室ボランティア活動経費支援」などを知っただけでも価値はあると思いますが、いかがでしょう。
posted by カーサ at 23:17| Comment(1) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月01日

「RI−MAN」へのドロップキック

多くの女性たちが夢見る、「お嬢様だっこ」をしてくれるロボット=「RI−MAN」を、理化学研究所バイオ・ミメティックコントロール研究センターが開発しました。

「介護福祉の現場で活躍するソフトなロボット」の5年後の実用化を目指しているそうです。

介護現場でのロボットのニーズは高く、製品化も期待されていますが、人間を抱き上げる行為は大変デリケートなだけに実用化までにはさまざまな困難があります。
介護ロボット実現のため日々努力している研究者の姿を知っているだけに、安易にケチをつけようなどとは思わないのですが、ことこの「RI−MAN」に関しては、あえて突っ込みをいれさせていただきます。

まずなんで、名前が「リーマン」なのでしょう。
理化学研究所の「RI」からでしょうか。
「リーマン」といえばいまどきは「サラリーマン」を思い浮かべます。

なんであんな顔形なのでしょう。
50年前のロボットならいざ知らず、いまどきあのデザインはありえません。

なんで予告編ビデオがあるのでしょう。
コンパクトな内容で、出来も悪くはありませんが、研究者の趣味なのでしょうか。

「RI−MAN」は、まだ研究開発の段階とはいえ、世間との感覚のズレが気になります。

科学は社会と共にあり、研究費も税金から捻出されていることを、研究者にはいつも感じていてほしいと思います。

「よいものをつくればそれでよし」という感覚は、ことロボットにおいては、It doesn't stop?

<つづく>
posted by カーサ at 21:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ロボット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする