2006年05月31日

一日3機のジャンボジェットが墜落

<つづき>
1970年に16,000人を超えた交通事故による死亡者数は、35年をかけて7,000人を割るまでになりました。その反面、事故件数は増加傾向にあり、100万件近くに上っています。

先日、開催された「人とくるまのテクノロジー展2006」。

第三期先進安全実験車プロジェクト「ASV-3」(Advanced Safety Vehicle)のデモンストレーションをはじめ、最新技術モデル車の展示(トヨタ・エスティマ、ホンダ・シビックなど)を通して、これからの「安心・安全」技術をわかりやすい形で紹介していました。

併催セミナーで講演された芝浦工業大学の古川修氏によると、

交通事故原因の58%はドライバーの認知ミスによるもので、判断ミスが23.5%、操作ミスが17.5%。
これらのミスを少しでもなくすためには、自律型先進運転支援システムと協調型運転支援システムとの連携が重要だと述べていました。

つまりクルマと道路(環境)の知能化が共に必要で、車と車、路と車、歩行者と車の「インフラ協調システム」の研究を現在進めているそうです。

ただし、ドライバーがシステムに依存してしまってはいけないので、システムによる効果との兼ね合いが難しく、事故低減効果の評価手法の確立を今後の課題に挙げていました。

また、トヨタ自動車の井上秀雄氏によると、

衝突安全、自律型予防、インフラ協調システムが実現すれば、交通事故を現在より60%低減できるだろうということです。

ちなみに、交通事故による死亡者数は先進国で10万人、世界では50万人。
これは1日3機のジャンボジェット機が墜落しているのと同じ数だそうです。

毎日こんなに死傷者が出ても社会的に受容されるのは、例えリスクがあっても
車が、便利で、役に立ち、効用がある、と人々が認めているからです。

自律型ロボットもそうなっていくのでしょうか。
<つづく>

参考項目 : 「効用」のないロボットなんて(5/23)


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2006年05月30日

人知を超えた複雑さ

<つづく>
クルマが故障した場合、ディーラーの修理場にもっていくわけですが、現在クルマに搭載されているマイコンの数は100個くらいあるそうで、プロの整備士もテスターをかけて、問題箇所を特定し、部品交換するだけということが多くなっています。
それは下手に調整したりすると電子制御全体に影響が出る可能性があるためです。

自動車メーカーも不具合のクルマを出さないよう大変な努力していると思いますが、ソフトウエアがこれだけ複雑になり、開発期間も短くなるとどうしても不具合は避けられないようです。

国土交通省のリコール対策室の発表によると、2005年のリコール届出台数は、556万3千台。
クルマのエレクトロニクス化にあわせるように、リコール届出件数が急激に増加しています。

つまり、将来どんな不具合がでるのかメーカー側も予測ができないため、出荷時の保証だけでなく、出荷後の補償に考え方を切り替えた結果ともいえます。

ホンダの「インターナビ・プレミアムクラブ」、トヨタの「G-BOOK」、日産の「カーウィングス」など、クルマの状態を継続的に維持・管理するテレマティクス・サービス※が始まっています。
<つづく>

※テレマティクスとは、通信(テレコミュニケーション)と情報処理(インフォマティクス)を組み合わせた造語。
カーナビや電子メールの送受信はもちろん、車の状況を外部からモニターし、事故や故障などのトラブルに伴うロードサービスの手配から、運転者の自宅や保険会社へ自動的にメール連絡などを行うことができる。

<参考文献> 「カーエレクトロニクス最前線」
         (新 誠一著 工業調査会)
 

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2006年05月29日

生まれてから120年もすると

M・シューマッハの17台抜きもすごかった今年のモナコGP。
市街地走行はやはり観ていて楽しいですね。

自動車流通研究所による調査によると、車を単なる移動手段と考えている人の比率は44%。
運転自体を楽しむFun to driveの割合は14%にしかすぎません。

その要因として、都市部への人口回帰や消費者のインドア志向化、女性の運転免許保有率の向上によるスーパーで物を買うのと同じ購入感覚などを挙げています。
車が誕生して120年。
車の家電化」が着実に進んでいるようです。

税金やガソリン代などのランニングコストを考えれば、安全面や居住性が向上した「軽」で十分、と思うのも当然かもしれません。
<つづく>






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2006年05月23日

「効用」のないロボットなんて

<つづき>
ロボット政策研究会の報告書は、昨年の中間報告で取りまとめられたことを踏まえて、市場環境、安全性、技術開発の3つを柱に構成されています。

特に「安全性確保」に関しては、資料編での事例を含め、かなりのページを費やしています。

トヨタや松下電器など大手メーカーが表だってロボットの開発を発表しないのは、技術的なことプラス、なによりもこの「安全性確保」がまだなされていないことにあります。

安全性の確保は、今後、法律も含め時間をかけて整備されていくことと思いますが、報告書では、ロボットの安全性の検討にあたっては、
ユーザーがサービスロボットを使うことにより、効用を感じるからこそ、その代償としてリスクを受け入れる
ということを認識すべきとしています。

つまり、研究のためのロボットの安全性を検討するのではなく、ロボットが現実に使われること、つまり「効用」があることを前提に安全性も考えるべきとしています。

服用されない薬について、その安全性をいくら研究してもあまり意味がないというのと同じかもしれません。

参考 :
ロボット適応分野の拡大、或いは市場失敗に備えて(4/24)
チャレンジングなミッション(4/21)
posted by カーサ at 15:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ロボティック・ミッション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月20日

「市場」としてのロボット

先日、ロボット政策研究会の報告書が発表されました。
今後のロボット政策についてとてもわかりやすくまとめられています。

まず、ロボットを
「人間の活動領域を拡げうる技術・製品」と位置づけ、
そして、
「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」のことを「ロボット」と定義しています。

「ロボット」のイメージは、「検索ロボット」から「ヒューマノイド型ロボット」まで非常に幅広く、これまでもいろいろな定義づけがなされてきたのですが、
ここではロボットを「カタチ」ではなく、

市場で必要とされる機能を発揮するために要素技術を統合したもの」

として、3要素あれば自動車や情報家電もロボットとみなし、ロボットを広い視点で捉えていこうとしています。

これは、ロボットの市場を拡げていく上でとても大切な「見方」です。

この定義を踏まえ、報告書は今後のロボット政策の方向性に関し、
@市場環境の整備
A安全性の確保
B具体的な用途を想定したロボット技術開発
を提言しています。

<つづく>

ちなみにロボカーサ・ドットコムでは、
「ロボット単体のイメージにとらわれることなく、人間の要求や環境によって作動、または人間の行動を自動的に支援する商品」
としてのロボットを紹介し、車、家を含めた空間のロボット化や人間のロボット化により、今後我々の暮らしはどう変わっていくのかについて取り上げています。


posted by カーサ at 11:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ロボティック・ミッション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月15日

ワールドカップ5大会分のストーリー 

TV中継もされ、国民の高い関心を集めたサッカー日本代表の発表。

そこには、ここに至るまでの国民皆が共有してきた多くの「ストーリー」がありました。

それは、Jリーグ誕生からはじまり、ドーハの悲劇、クラブチームの消滅、フランス大会出場、カズの代表落選、日韓大会開催、中国でのアジアカップ優勝、北朝鮮との無観客試合・・・

ロボットが本格的に普及するまでに、ワールドカップ5大会分くらいはかかることを考えると、その間にたくさんの「物語」を紡ぐことが必要です。

すでに我々は、歩き、走るASIMOの姿を、愛されながらも、挫折したAIBOの姿を、地道に働くルンバの姿を、見てきました。

今後も多くの失敗と少しの希望を繰り返しながら、ロボットは少しずつ生活の中に入ってくるでしよう。

皆が共有できる多くの「物語」を通して、研究者と国民が共にロボットと暮らす生活を考えていくことが、大切です。

代表に最後に選ばれた巻選手は、代表に選ばれるのは厳しいという声が多い中で、どのようにモチベーションを保っていたかという質問に答えて、

「もちろん僕も厳しいというのはすごくわかっていました。
でも、本当に多くの人が僕のことを期待してくれて、町でも『頑張れ』と 声をかけてくれました。
そういう応援が僕の支えになりましたし、そのなかで僕自身があきらめてしまったら、そういう周りの人たちにも失礼だという気持ちがありました」

そして、
「改めて、努力というものは人を裏切らないんだなと感じました」

Road to Robotic Lifestyle 2025.
泥臭く、アグレッシブに、前へ進んでいくしかありません。

参考 :
オシムコミュニケーション 2/22の項
オシムモチベーシヨン  2/23の項
posted by カーサ at 22:24| Comment(0) | TrackBack(2) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月11日

エコとユニバーサルデザインの先へ

先日、「イーユーハウス」(ECO&UD)を見てきました。
今年の1月にオープンしているのですでにご覧になった方も多いかと思います。

玄関、リビング、寝室、バス・サニタリーなどそれぞれ良く出来ていますが、「環境とユニバーサルデザイン」をテーマにしているだけに、家全体が住む人と環境にとって快適で、使いやすいように設計されています。
(もちろんモデルハウスなので、生活感はなし)

特に、「キッチンナビ」を搭載したキッチンスペースは、セキュリティ、ネットワーク、エネルギーマネジメントなど情報の管理センターとして位置づけられており、とても印象的でした。

環境とユニバーサルデザインの先には、間違いなくロボットと暮らす生活があります。
それは、中央大学の木下氏が述べているように、「健常者、体の不自由な人、ロボット」が共存する空間です。

とはいえ、モデルハウス並の大きな家やはじめからロボットとの共生を意識した作りでないかぎり、WAKAMARUのようなホームロボットといきなり暮らすのはかなりハードルが高いことに思われます。

既存の住宅を考えた場合、個々の部屋のロボット化と家全体をコントロールするスペース(キッチン又はリビング)のロボット化が、次のステップになるのではないでしょうか。

きっとその頃には、部屋を動き回って掃除するロボットや洗濯物をきちんとたたんでくれる洗濯ロボット、食事後の食器の片付けをしてくれるテーブルウェアロボットなど、家電を進化させた役立つロボットたちが活躍していることでしょう。

2006年05月09日

第3回 グランドチャレンジ

米国国防総省高等研究計画局(DARPA)は、2007年11月に開催される第三回「Grand Challeng」の大会要項を発表しました。

今回は、前回までの砂漠コースから都会のコースに舞台を変え、
都市に設定された60マイルを、
交通規則に従い、障害物を避けながら、他の車の流れを乱さず、混雑する交差点を通り抜け、
ロボットカーを走行させるというもの。

6時間以内に完走した入賞者には、1位200万ドル、2位50万ドル、3位25万ドルが贈られます。

軍事利用を想定しているとはいえ、なんとココロ踊るプロジェクトでしょう。
スコンと抜けた明快さがあります。

そして、なによりプロジェクトを「一言」でいえる強さがありますね。


参考 :
「グランドチャレンジ」 (1/10)
「グランドチャレンジ U インテルの戦略」 (1/25)
「チャレンジングなミッション」 (4/21)
「ロボット適応分野の拡大、或いは市場失敗に備えて」 (4/24)
posted by カーサ at 11:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ロボット・アンダーワールド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月07日

留守のとき役立つロボット=ペット編

今年のGWは天候に恵まれたこともあって、繁華街も行楽地もすごい人でしたね。
近場の公園も親子やペットを連れた人でにぎわっていました。

PCや携帯から留守中のペットの様子を見たり、声をかけたり、餌をやったりできる「iSeePet」という商品が最近販売されました。

犬や猫を飼っていると、仕事で遅くなったときや小旅行をするときなんか、餌はどうしょうかと心配ですよね。
そんな飼い主にとって、この商品役立ちそうです。

インターネットや東急ハンズで、4〜6万円台で購入可能。

ヒットしそうな気がします。
posted by カーサ at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | ちょっとだけ気になる商品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月04日

ソクラテス、またの名を「あのくそいまいましい金屑のかたまり」

映画「2001年宇宙の旅」に登場する人口知能コンピュータ「HAL9000」。

アーサー・C・クラークの種本「失われた宇宙の旅2001」によると、当初、それは自律移動型二足歩行ヒューマノイドとして考えられ、「ソクラテス」という名前だったようです。

ちょっと長くなりますが、ソクラテスの外形は以下のように描写されています。

「ソクラテスは平凡な筒形で、あちこちに見える検査ふたの下には、電子機器が隠れている。
両腕は、脚をもっと細かくデリケートにしたものだと思えばいい。
右の手首から先は単純な三本指となり、ぐるぐると回転する。
左手のほうは、万能工具で、いろいろ取り揃えた便利な器具の中には、コルク抜き兼缶切りも含まれる。

首から上は顔ではなく、種々のセンサーの集合から成るむき出しのフレームワークである。
一台のTVカメラで360度の視野が得られるが、これは四つの広角レンズがそれぞれ四つの方向を向いているからである。
人間と違い、ソクラテスには自由に動く首は必要ない。
彼はぐるりをいっぺんに観ることができるのだ」

この種本には映画の製作過程で失われたオリジナルの原稿が載っており、それにまつわるエピソードも含めとても面白いのですが、
ソクラテスがそのまま登場していたら、「2001年」はきっとありきたりの陳腐な映画になっていたことでしょう。

ヒューマノイドが宇宙船を操縦するというのは、ロボットが車を自分で運転するようなもの。

宇宙船がロボット化(HAL9000)しているからこそ、制作開始から40年たってもリアリティを感じさせるのです。

作者もヒューマノイドでは、やはり無理があると感じていたようで、ソクラテスのことを
「あのくそいまいましい金屑のかたまり」と自虐的に描写しています。

とはいえ、アーサー・C・クラークは、ロボットの進化について登場人物に次のように言わせるのを忘れていません。

「(ロボットは)いまだ原始段階にあるものの、彼らは学んでいく。
すでに人脳の及びもつかない複雑な問題を処理しているのだ。
さほど遠からぬうちに、彼らは自らの後継者をデザインし、ホモ・サピエンスには理解できないゴールへと手を伸ばすようになるだろう。
(中略) その日が来ても彼らがおのれの造り主たちと仲良くしてくれたら・・・そう願わずにはいられない」

出典: 「失われた宇宙の旅2001」
    (アーサー・C・クラーク著、伊藤典夫訳 / 早川書房)
posted by カーサ at 22:45| Comment(0) | TrackBack(2) | ロボット・アンダーワールド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月02日

IKEA それでも、おおらかに

連休の合間に、「IKEA」に行きました。

オープン間もないこともあり、すごい混雑ぶりでした。
20代〜40代の消費意欲旺盛な女性が中心。
豊富な品揃えで勢いを感じるし、なによりショッピングする楽しさがあります。

船橋から幕張に至る湾岸地区は、このIKEAをはじめ、東京インテリア、大塚家具、ROOM DECOなどの家具インテリア店、また、ららぽーと、ビビットスクエア、コストコ、カルフール、イオンなどのショッピングセンターやYAMADA電機、コジマ、トイザらス、VIVAホームなどが点在し、勢いのある旬な店が多い反面、事業採算に合わず撤退する店も多い日本有数の激戦地。

それらの店を回って思うことは、いまロボットを販売するとはどういうことかということ。

「IKEA」にくるような、マニアではない普通の人々が求めるモノとは、

楽しくステキな毎日を予感させ、
シンプルで低価格、
かつ機能のしっかりした、モノ。

人々がロボットに求めるモノもきっと同じハズ。

経済産業省のロボット技術戦略マップによると、ロボットの「本格普及」は2015年以降。2010年までは業務用の警備・掃除ロボットや家庭用留守番ロボットなどの「プレ普及期」としています。

あと10数年、おおらかな気持ちでロボットを見守りたいものです。