NHK教育の新日曜美術館で放送された「伝説の書家 三輪田米山(べいざん)」。
幕末から明治にかけて、天衣無縫な書を残した三輪田米山は、「酒を飲まぬと、筆をとる事難し」と三升の酒をあびるように飲み、酔眼朦朧倒れる寸前に書くという書道家でした。
米山の本職は四国松山の神主で、50数年にわたり毎日日記を書き続け、そこに書かれた天気の様子は後に松山気象台の参考になったほど真面目な性格の人でした。
また近所の子供たちに書道を教え、様々な書の技巧にも通じていました。
しかし、それだけでは良い字は生まれない、上手に書きたいという気持ちを捨てたとき、良い字が生まれる、しかも中途半端な酔いでは決して良い字は書けないと、
升の単位でしこたま酒を飲み、硯にも清めの酒を入れ、時には人に抱えられ、時には血反吐を吐きながら、まさに命がけで書いたといいます。
書には、あえて篇(へん)と旁(つくり)の間に透き間のある1字を入れ、読み手に考えさせる時間、見つめる時間を求めました。
米山の書はどの字もとても魅力的なのですが、特に「屋外の書」、その場の環境に合わせて書かれた神社の石文(いしぶみ)に、なんともいえない温かみを感じます。
今年は米山没後100年だそうです。
自分が知らないだけで、日本にはまだまだすごい人がいるのだと実感させられたひとときでした。
参考 :
若冲と環境インタラクション (2006.8.20)
仏神レプリカント (2006.10.25)
余計な説明はしない心地よさ (2007.4.8)
逆転の発想の遺伝子 (2007.4.10)
デュマス、その恐るべき表現力 (2007.5.2)
江戸ランドスケープ (2007.7.22)