昨年11月末に開催された日本SGIフォーラム「コンテンツが主役の時代」で、2005年の「Grand Challenge 」で優勝したスタンフォード大学人口知能研究所の講演がありました。
この「Grand Challenge 」、TVニュースでも取り上げられていましたのでご存知の方も多いかと思いますが、米国国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)が主催した完全に人工知能だけで運転する無人ロボット自動車レースのことです。
1回目の2004年の大会では、最長走行距離12kmで完走車は1台もなかったのですが、2005年はスタンフォード大学をはじめ、23チーム中4チームが212kmのコースを完走しました。
レースコースは車がやっと通れるような曲がりくねった崖や砂漠などの荒地で、無人の車がさまざまなセンサーやソフトウェアを使って難所を走りぬけていきます。
講演では走行時の車から見た映像も紹介されていましたが、よくもそんな狭い崖っぷちを自動で走りぬけるものだと驚きました。しかも平均時速は31km。
DARPAもまさかこんなに早く完走してしまうとは思っていなかったようで、2006年も開催するかどうか未定とのこと。
スタンフォード大学人口知能研究所の今後の目標は、2007年までにサンフランシスコからロスアンジェルスまで完全自動運転させることだそうです。
この「Grand Challenge 」は、戦場で戦う兵士の生命を守るため、2015年までに軍用自動車の3割を無人自動車にするという軍事目的がまずあり、優勝賞金(200万ドル)も国の軍事予算から支出されています。
平和利用に限定される日本においてはやりたくてもできないイベントかもしれませんが、こういう高い目標と高額賞金こそが技術を飛躍的に高める一番の有効手段だということを証明しています。
当初は軍事目的であったとしても、民間がビジネスとして応用することにより、社会的な意義も見出されていくのだと思います。
講演ではロボット自動車の活用効果として、
自動運転により通勤が楽になり、その分仕事の生産性をあげることができる。
自立をあきらめている高齢者が社会活動に携ることができる。
駐車場に自動的にいける車が普及することによって、都市の不動産状況が変わる。
とし、運転者を安全に支援するシステムが今後確立されていくだろうと述べていました。
ちなみに優勝した車は、映画「キング・コング」のクルーカーとしても使われたフォルクスワーゲンのSUV「トゥアレグ」。それなりの資金も提供していると思いますが、宣伝効果、付加価値、今後のプロモーションへの活用を考えればビジネスとして十分元がとれたのではないでしょうか。
ただし、「Grand Challenge 」が軍事目的ということもあり、いまのところHPなどでの掲載は控えているようです。