そのどれもが素晴らしいチャレンジですが、なかでも「小型ソーラー電力セイル実証機」と名付けられた「イカロス」の技術実証実験は要注目です。
実験は大きく分けて2つ。
ひとつは、薄膜太陽電池が張られた一辺14mのセイルを広げ、宇宙空間で発電することを確認すること。
展開されたセイルの全体像は本体に搭載されたカメラを宇宙空間に放出して撮影します。
もうひとつは、セイルが太陽光だけで加速・減速し、方向転換や軌道制御できることを確認すること。
併せて、本体のスラスタ噴射や薄膜に張られた液晶デバイスによる姿勢制御も行われます。
その他、イカロスから電波を放出して、複数の地上局で受信することで高精度な軌道を決定するVLBI(※)実験や、搭載されたダストカウンターによる軌道上のダスト分布推定実験など、理学や工学の多くのオプション実験を行う予定で、この機会にやれることはすべてやってしまおうという研究者の旺盛な意欲が伝わってきます。
今回の実証実験の成果を基に、将来的には高性能のイオンエンジンを組み合わせて、木星への長距離航行を目指すということです。
(※)VLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉法)
はるか彼方にある電波星(準星)から放射される電波を複数のアンテナで同時に受信して、その到達時刻の差を精密に計測する技術。
<追記>18日の打ち上げは天候不順により、21日に延期された。
<追記>JAXAはイカロスが予定していたミッションすべてに成功したと発表。(2010年12月10日)