トヨタ車の大規模リコール、集団訴訟にまで発展したこの事件は、人為的なミス(ヒューマンエラー)による事故という結論になりそうですが、真相は当初から言われていたようにアメリカの官・民(自動車メーカー、一部のマスコミ、訴訟代理人など)挙げてのトヨタ叩きであると言えそうです。
その存在が不確かであったにもかかわらず、大量破壊兵器があるはずだと言いがかりをつけて、イラクに戦争を仕掛けた構図と相通じるものを感じます。
また、安全に関わる原因追及を錦の御旗としたアメリカ当局による「徹底的な調査」で、トヨタのハイブリット技術がアメリカにタダで流出した疑いがあります。
当然、トヨタも「ブラックボックス」データの提供には抵抗したと思いますが、日本政府による後ろ盾も期待できず、「錦の御旗」とアメリカ市場の重要性の前には、いかんとも為しようがなかったのではないでしょうか。
これが、例えばボーイング社の旅客機が墜落し、事故原因が電子制御システムの欠陥にありそうだとして日本政府が「ブラックボックス」データの提供をボーイング社に求めても、ボーイング社が先端技術データを提供するとは思えません。
きっと、アメリカ政府もなんやかやとしゃしゃり出てくるでしょう。
今回の事件を通して、トヨタは多くの経験と教訓を学んだので、同じような失敗は犯さないと思いますが、安全に関わる原因追及を錦の御旗とした官民共闘による最先端技術の強奪は、他の国でも起こりうる話です。
ITとは違い、モノづくりには時間がかかります。
一から作るのは、それは大変なだけに、既に「在るモノ」を盗むのが一番効率的で、手っ取り早い。
最先端技術の固まりであるロボット。
例え事故原因がヒューマンエラーであったとしても、「ロボットの落ち度で事故が発生した。事故原因を調べるから、先端技術の中身を見せろ!」と言いがかりをつけられ、「見せないなら徹底的に叩いてやる! 市場から消してやる!!」と、恫喝にも似た警告を受けたとき、ロボットメーカーは一体どのように対応すればいいのでしょう。そして技術を開示することで、それが軍事技術に転用される恐れがある時、日本政府は日本企業を断固守る覚悟があるのでしょうか。
トヨタの事件は、ロボットを含む日本の最先端技術の海外での取り扱いに多くの教訓を残しました。
現在、経済産業省は生活支援ロボットの安全性確保の基準づくりを進めており、日本がイニシアチブをとってのロボットの国際標準化を目指しています。
トヨタが今回の事件の経験と教訓をロボットの安全性確保の基準づくりに活かしてくれることを願っています。
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