毎年、必ず購入する書物がありました。
塩野七生氏の「ローマ人の物語」。
その最後の巻「ローマ世界の終焉」が昨年末に出版され、15年に及ぶシリーズが終わりました。年末年始に読んだ方も多いのではと思います。
ハンニバルとの戦い、カエサルの活躍、パクス・ロマーナと続く勢いある前半部の執筆に比べ、5賢帝以降ローマが迷走し、キリスト教化していく中盤から終盤にかけてはその時代がそうであったのか、あるいは筆者があまり乗る気がしなかったのか、または出版社の意図か、時折日本の失われた10年に無理やりあわせる感じもありました。
しかし、ローマ帝国の終焉を描くこの最後の巻は、ふたたび気力、内容とも充実し、読み応えのある物語になっていると共に、どこか諦観しているような静かな印象を受けます。
1千229年続いたローマ帝国の最後は実にあっけないものでした。
「蛮族でも攻めてきて激しい攻防戦でも繰り広げられた末の、壮絶な死ではない。炎上もしなければ阿鼻叫喚もなく、ゆえに誰一人気づいた人もいないうちに消えうせたのである」
ローマ帝国の滅亡の「年」は紀元476年。しかし、滅亡した「月日」は、まったくわからないのだそうです。
つまり、ローマ人がローマ人らしくなくなったときにローマ帝国は滅亡しました。
塩野氏が皇帝を軸にローマ帝国の衰亡を描きながら、シリーズのタイトルを「ローマ人の物語」にした理由です。
本日、防衛省が発足しました。
安倍晋三首相は同省内で行われた記念式典で訓示し、「戦後レジーム(体制)から脱却し、新たな国造りを行うための第一歩となる」と述べました。
これから新しい「日本人の物語」がはじまる、のでしょうか。
参考 : 「ローマ人の物語XV ローマ世界の終焉」(塩野七生著/新潮社)
2007年01月09日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック



