2007年01月25日

谷津干潟と、ひとりの男

<つづき>
もうひとつは2003年4月に行われた千葉県議会議員選挙でのこと。

千葉県習志野市に、渡り鳥の中継地として有名な「谷津干潟」があります。
ちょうど今頃はシベリア方面から越冬する渡り鳥たちで一番にぎやかな季節ですが、30年前の「谷津干潟」はゴミが散乱し、夏の引き潮時には汚臭が漂うそれはやっかいな場所でした。

そんな干潟のゴミをたった一人拾い続ける男がいました。タクシー運転手の森田三郎氏です。
森田氏とは学生の頃に知り合い、以来ときどき連絡を取り合っていました。

森田氏は習志野市議会議員を2期務めた後、千葉県議会議員に当選。
環境と食の安全を中心に活動を続け、2003年4月に2期目の県会議員を目指して立候補しました。

人手が足りないというので、気軽な気持ちで手伝うことにしたのですが、
公示日当日に事務所にいくと、応援スタッフは2人だけ。

森田氏は市議時代からどこの政党にも属さず、完璧な一匹狼ということもあり、選挙に大量の応援スタッフを雇うお金はもともとないのですが、
この選挙の前に、市の環境政策に怒り、谷津干潟で集めたゴミを習志野市役所のロビーにぶちまけてしまった事件や、共に環境政策を進めている女性市議とのでっち上げの不倫交際を吹聴する右翼の街宣活動、怪文書回覧などの動きもあって、市民の森田氏を見る目が変わり、表だって応援しずらい雰囲気の中での選挙戦となっていました。

そのためポスター張りから、選挙カー運転手、旗もち、そして慣れない応援演説まで、一人何役もこなさなければなりませんでした。

どしゃぶりの雨の中、誰が聞いているのかもわからないマンションの住人に向かって、吃音でとつとつと話す姿が、とても印象的でした。

谷津干潟は1993年6月、日本初のラムサール条約登録湿地に指定され、立派な「谷津干潟自然観察センター」もオープンしていますが、
そこに森田氏の活動を称える説明は、ありません。

森田氏は県会議員を勤めながら、今もひとり谷津干潟のゴミを拾い続けています。
posted by カーサ at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | エコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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