その観測20年を記念しての講演会が、東京大学で行われました。
1987Aと命名された超新星の爆発により放出された10兆個のニュートリノは、16万光年を経て南半球に飛来。地球を貫通してカミオカンデへ進入して、そのまま光速で飛び去っていきました。
その時、観測されたニュートリノは、わずか11個。
しかし、これがニュートリノによって宇宙を観測する「ニュートリノ天文学」の幕開けとなりました。
いつ地球に降ってくるか知れないニュートリノの観測など、われわれの日常生活になんら役立つものでもありません。いわゆる基礎科学というやつです。
しかし、この20年間、ニュートリノを観測することで、われわれの宇宙や地球に関する知識は大きく拡がりました。
すぐ生活に役に立つわけでもなく、難し過ぎて一体何を研究しているのかさえわからない基礎科学に、国民が巨額の予算を認めるのも、われわれが本当の真理を「知りたい」と思うからでしょう。
実際、この講演会でも披露された宇宙を支配するダークエネルギーの話など、難しい理論に関わらず、とんでもなくおもしろいものでした。
その点、ロボット工学は科学とは違います。人々が求めているのは、実際に役立つ技術。
「知りたい」と「役立つ」、どちらも大事なことだけど、真理をとことこん探究することで大きな拡がりを持つ科学と、真理をとことん探究しても一向に拡がらない技術があることを、このニュートリノの観測は物語っている気がします。