このニュースを聞いて、多くの人がさまざまな感想を持ったことと思います。
日本学生野球憲章は、昭和21年12月に学生野球基準要項として制定され、以来平成4年2月まで計7回改正され、今日に至っています。
その第13条、「選手又は部員は、いかなる名義によるものであっても、他から選手又は部員であることを理由として支給され又は貸与されるものと認められる学費、生活費その他の金品を受けることができない」
また日本学生野球憲章の徹底を期した「アマチュア野球問答集」にも、
問47 学校の制度として野球部員であることを理由とした授業料、生活費の免除(特待生制度)及び奨学金制度などはどうなるのか。
答)いけません。
問48 学校の制度として全学生を対象とした特待生制度及び奨学金制度において奨学金などを受ける時はどうか。(全学生と同条件、同資格の上で)
答)野球部員であるという理由でなければかまいません。
と明確に記載されており、違反した学校がそのことを知らなかったと言い訳するのは難しいでしょう。
日本の野球は、学生野球とプロ野球とが完全に別組織であり、サッカーのように組織の一元化がなされていません。
そして学生野球の本質は、日本学生野球憲章の前文にすべて集約されています。
「われらの野球は日本の学生野球として学生たることの自覚を基礎とし、学生たることを忘れてはわれらの野球は成り立ち得ない。勤勉と規律とはつねにわれらと共にあり、怠惰と放縦とに対しては不断に警戒されなければならない。元来野球はスポーツとしてそれ自身意昧と価値とを持つであろう。しかし学生野球としてはそれに止まらず試合を通じてフェアの精神を体得する事、幸運にも驕らず非運にも屈せぬ明朗強靭な情意を涵養する事、いかなる艱難をも凌ぎうる強健な身体を鍛練する事、これこそ実にわれらの野球を導く理念でなければならない。この理念を想望してわれらここに憲章を定める」
つまり、日本の学生野球は柔道や剣道、相撲などと同じように、普段の鍛錬と規律を重んじ、野球という「道」を究めていくことをその本懐としています。
高校サッカーがワールドカップ出場を頂点とした世界を目指す開放系スポーツだとすると、高校野球は「学生野球」を極める閉鎖系運動部だといえます。
メジャーリーグで活躍するイチローや松井の姿を見れば、一概に閉鎖系運動部が悪いことだとは思いません。
でも、外に向かって開かれたイメージのあるほうが、楽しいとは思いませんか。
参考コラム:甲子園とロボット。機械と人間の間に必要なもの (06.8.22)