2007年05月09日

ロボットに関するいくつかの報告書 B

(つづき)
次世代ロボット安全性確保ガイドライン(案)」(経済産業省)

家庭用ロボットが普及するためには、「安全性」「共通基盤」「費用対効果」など、まだまだ乗り越えなければならない課題が多いですが、先月、その「安全性」についてのガイドライン案が発表されました。

次世代ロボットの関係主体を製造者、管理者、販売者、使用者、使用者以外に分類し、それぞれの安全性の「確保」についての指針を行っています。

ロボット独自の安全規格というよりも、既存の法律(製造物責任法、労働安全衛生法、産業用ロボットの安全基準など)の次世代ロボットへの適用、解釈といった趣ですが、
ポイントは、
一つの保護方策が十分機能しなかった場合でも事故防止が図られるようにする「多重安全の考え方」を取り入れている点。

将来、どんなロボットが我々の生活に入り込み、どのような働きをし、また我々がロボットにどう接していくのか現段階でわからない以上、細かな安全対策を論じても意味はないわけで、安全性確保の原則をまずは提示したことはとても正しい判断だと思います。

最終的に「素人」がロボットを扱うわけですから、自動車が誕生した後に様々な問題が生じたように、例え今、安全基準を完璧に満たすロボットを作ったとしても、様々な事故事例を積み重ねていく中でしか、より安全な策を講じることはできないでしょう。

しかし、家庭用ロボットがまだ普及していない段階で安全性確保のガイドライン案を作り、国民の意見も取り入れながら、世界にさきがけて実施していくことは、日本が世界におけるロボットの安全性のイニシアチブをとっていくためにも重要であり、意義のあることと思います。

ちなみに、韓国では人型ロボットの虐待問題やロボットと人間の適正な関係を定めた「ロボット倫理規定」(ロボットの役割や能力に関する倫理ガイドライン)を産業資源省が立案しているようですが、ロボットのことを心配するより、もっと先にやることがあるだろうと、ツッコミの声が聞こえそうですね。

また、英国科学イノベーション庁が昨年発行した報告書に「人権をロボットにまで拡大することが要求されるかもしれない」と記されていたことに対し、ロボット工学の専門家らが「機械が意思を持つという考えはおとぎ話のようだ」と反発して、人々がどのような機械の活用を望んでいるのかを知るための公開討論を先日行ったようです。

どんな結論になったのでしょう。
(つづく)

参考: 「平成18年度特許出願技術動向調査の結果について ロボット編」(経済産業省、特許庁)
ITmedia ニュース (4/25)
ThinkIT ニュース (5/7)

参考コラム :
日本の一番のアキレス腱 (07.3.11)
シンドラーのリスク (06.6.6)
シンドラーのリスク U (06.6.8)


posted by カーサ at 14:10| Comment(0) | TrackBack(2) | ロボット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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