「リンネと日本の分類学」と題して、17世紀以降の日本における分類学の歴史を前半は江戸時代に日本にやってきたツェンベリー、ケンペル、シーボルトらの功績や杉田玄白、伊藤圭介らの活躍を通して、また後半はご自身の研究テーマ「ハゼ亜目魚類」を中心に語られています。
そして、今後の分子生物学への期待と共に、
「私自身としては、この新しく開かれた分野の理解につとめ、これを十分に視野に入れると共に、リンネの時代から引き継いできた形態への注目と関心からも離れることなく、分類学の分野で形態のもつ重要性は今後どのように位置づけられていくかを考えつつ、研究を続けていきたいと考えています」と締めくくっています。
原文は英語ですが、招待を受けたリンネ協会への感謝と植物からはじまった分類学が日本に伝わり、自身の研究にまで影響を与えたことを簡明で素直な言葉で述べられています。
普段の天皇陛下は、内閣総理大臣の任命から閣議決定された約1000件の書類への捺印・署名をはじめ、約200回の宮殿儀式、100ヶ国以上の外国要人・大使との会見、通算450回以上の全国戦没者追悼式や国民体育大会への出席、被災地視察、通算50ヶ国超の国際親善訪問、そして宮中祭祀、歌会始などの伝統文化の継承など、多忙な公務を行っています。
そんな公務の合間に40年以上に渡りハゼ類の分類の研究を行い、日本魚類学会の会員として28編の論文を同学会誌に発表しています。
1980年、学者としての業績によってしか会員になれない50名限定のリンネ協会外国会員に選ばれ、また1998年には英国王立協会(ロイヤル・ソサエティ)から、科学の進歩に顕著な貢献のあった元首に贈られるチャールズ二世メダルを受賞しています。
そして先日、英国の科学雑誌「ネイチャー」に今回のリンネ協会の基調講演の要約が掲載されました。
アメリカのゴア元副大統領が環境問題で脚光を浴びていますが、長年地道に「ハゼ」の研究をされたきた「科学者・明仁」としての天皇陛下が、世界、特にアジア諸国にもっと知られるようになればすばらしいことだと思います。
参考 : 読売新聞(6.14 / 7.12)
御料ロボット (06.7.24)
多摩川の生態系の勉強をこの先してみたいと思っていることを友人に言ったところ今上天皇の業績を聞き、まだ充分時間は残されているし、大変な励みになりました。今までは、皇室とは儀式ばかりでと思っていましたけれども、学問に対する情熱を感じました。勇気を与えていただき嬉しかったです。