「こんぴらさん」の愛称で知られる金刀比羅宮の書院には、円山応挙、伊藤若冲、岸岱などの画家の手による130面の襖絵があり、今回、そのうちの10室を再現しています。
特に通常は書院でも非公開の「花丸図」(若冲)は、淡い濃淡や「見えない」ところに美を感じる日本画の中にあって、色鮮やかな200点もの花々が六畳の襖いっぱいに等間隔で並び、圧巻です。
しかし、惜しむらくは、建物と一体となった書院襖絵本来の美しさが主催者の創意工夫にもかかわらず、もうひとつ伝わってこないこと。
絵画一点ものの展示とは違い、環境と共にある美術品展示の難しさがあります。
それに対して、同時開催されている「歌川広重 名所江戸百景」は、もともと江戸の市中と郊外の景観を紹介する「企画モノ」だけに、単品としての「キレ」だけでなく、120枚の連続する「面」としておもしろさが伝わってきます。
今回、広重の版画をじっくり見て、意外なことに気づきました。
人物の顔が皆「ヘタウマ」なのです。
それが作者の洒落によるものなのか、版元の指示なのかはわかりませんが、特に男性の顔はほとんどマンガです。
風景や名所企画シリーズの職業画家として活躍した広重にとって、人の顔もデフォルメした風景の一部として見ていたのかもしれません。
それにしても江戸のなんと多様で、美しい情景か。
グーグルマップスでも「名所江戸百景」を楽しめます。
参考 :
若冲と環境インタラクション (06.8.20)
仏神レプリカント (06.10.25)
余計な説明はしない心地よさ (07.4.8)
デュマス その恐るべき表現力 (07.5.2)