2007年08月15日

今日的な意義としての東京裁判

敗戦から62年の今日。戦争を体験した人が少なくなる中で、あの戦争は何であったのかを検証する様々な企画や催しが各地で行われています。

NHKスペシャル「パール判事は何を問いかけたのか〜東京裁判・知られざる攻防〜」は、連合国を中心とした11ヶ国の判事団の多数意見により、25人が有罪となり、7人が死刑となった極東国際軍事裁判(東京裁判)で、ただひとり「全員無罪」を主張した裁判官(パール判事)を取り上げていました。

番組では、何故、彼が全員の無罪を主張するに至ったのか、パール判事の生い立ちや時代背景、パール判事と他の国々の判事とのやりとりを通して明らかしていきます。

インドのパール判事の主張は、明確です。
東京裁判で被告が問われた罪状、すなわち「平和に対する罪」「人道に対する罪」は、「事後法」であり、開戦当時、それらの罪を問うことは国際法上なかった、というものでした。

イギリスのパトリック判事を中心とする欧米の判事は、日本がドイツの同盟国であったことから、「ニュルンベルク裁判」でナチスドイツを裁いたのと同じ論旨、上層部による「共同謀議」を主張します。

小林正樹監督の「東京裁判」でもアメリカの判事がアメリカ軍による原爆投下を問題視していたシーンがありましたが、判事の間にも様々な意見があり、裁判そのものが空中分解する可能性があったことを番組は明らかにしていきます。

結局、パトリック判事の多数派工作が成功して、東条英機元首相をはじめとする7人が「平和に対する罪」「人道に対する罪」で死刑になりますが、
パール判事は1200ページを超える反対意見をまとめます。
そこには、日本軍が非戦闘員や俘虜に犯した残虐行為(南京虐殺やバターン死の行進)を糾弾すると共に、アメリカ軍による原爆投下も激しく問いただしています。

番組は最後に将来の大量虐殺や侵略の発生を抑止するのを目的に2003年に開設された国際刑事裁判所に触れ、「人道に対する罪」が現在では国際法として受け入れられていること、また「平和に対する罪」も国際法に取り入れるよう審議が進んでいることを紹介し、「東京裁判」の今日的な意義を問いかけていました。

ちょっと意外だったのは、マッカーサーが多国籍判事による「東京裁判」にあまり乗り気ではなかったということ。
日本軍によるパールハーバーの侵略など、アメリカ単独で始末をしたかったようです。
国連の意向を軽視して、アフガニスタンやイラクに侵攻し、為政者を裁いた今のアメリカの姿にも重なります。
(つづく)

参考 : 硫黄島の彼方(07.1.14)
posted by カーサ at 10:13| Comment(0) | TrackBack(1) | ポリティクス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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