その後、佐倉城址などを散策し、印旛村にある寺に足を伸ばしました。
「松虫寺」という名前にひかれて・・・
千葉ニュータウンの開発の波が間近まで迫る中、昔ながらのこんもりとした森の中に松虫寺はありました。
寺創建にかかわる言い伝えによると、
奈良時代、聖武天皇の第三皇女・松虫姫が重い病気にかかったとき、仏の夢のお告げによってこの地の薬師を訪ね、仏に祈ったところ、病が治った。
大いに喜んだ天皇は、僧の行基に命じて寺を建てさせ、その寺を姫の名をとって松虫寺と名づけた。
という誠由緒正しそうな言い伝えなのですが、実際の松虫寺はよく言えば質素、普段あまり手入れがなされていない印象を受けました。
今でも辺境なこの地に、いくら仏のお告げがあったとはいえ、何故高貴な皇女がやってきたのか。
実在の松虫姫 = 不破内親王の生涯は、有力な皇嗣候補であった塩焼王の妻となったことで、政治的な謀略と、その勝気な性格が災いして、何度も地方に幽閉されるなどの憂き目にあったようです。
なので、不破内親王本人というより不破内親王に仕えた侍女などがなんらかの理由により印旛村に飛ばされ、そのとき受けた手厚いもてなしへの礼として寺を興すことになったのかもしれません。
ロボット研究者の研究費を巡る貪欲な駆け引きや一向にブレークせず元気のないロボットビジネスの話ばかりを見聞きしてきた身には、伝説の松虫寺建立を巡るこの小さな歴史ロマンは、どこかほっとする心持ちがしました。
ちなみに、本尊の七仏薬師瑠璃光如来は国の重要文化財に指定され、秘仏として33年に一度開帳されるそうです。
この33年というところがまたなんとも、いい感じですね。