旧石器時代は生活のための実用一辺倒のモノばかり作られていたと思われがちですが、実際は非常に多様なモノが作られています。
考古学者の松木武彦氏は、旧石器時代の石器の中について、
「大きく美しく、ひたすら見た目を追求した大型石ヤリは、かなりの石材と手数と時間とをつぎこんだわりに、薄くて壊れやすいという機能的欠陥をもち、経済的には不合理な人工物だ。
使うことよりも、作ることそのものを楽しみ、技を競い、出来映えに陶酔し、「ほら見ろ」と誇示するための道具で、経済的な実質価値よりも、認知上の付加価値、メッセージ性に満ちた品物」
が数多くあると述べています。
先日の「クローズアップ現代」(NHK)で、ジュネーブ国際モーターショーに出品したモディー社(岩手県一関市)の超軽量スポーツカーが紹介されていました。
カーボンファイバーとアルミを使用したボディは、重量750kg。塗装は一切せず、素材はむき出し。無駄をそぎ落とし、走る楽しさを追求したといいます。
デザインと感性に訴える加工技術で、地場産製品を直接世界に売り込む「山形カロッツェリア研究会」を組織したデザイナーの奥山清行氏は、
『「必要ないんだけど欲しくて仕方がないモノ。買う人がどうしても欲しいと思う強烈な個性」
をブランドと位置づけ、作り手自らが、
「世界のどこにもなく、触りたいという気持ちを起こさせ、絶対に欲しいと思うモノ」を
「誰のためでもなく、納得いくまで、自分のために作る」こと。
それが、「意思をもったモノ」に通じる』、と述べています。
そういった商品は、当然高価で売り先は限定されます。
モディー社のスポーツカーには世界で20台の先行予約が入ったそうです。
(つづく)
参考文献 : 列島創世記 (小学館)