2016年06月06日

はじめの一歩


スイスで行われたベーシックインカ(BI)導入の可否を問う国民投票。
結果は予想通りの否決(賛成は23%)。

それでもベーシックインカムが国レベルで議論された意味は大きい。

スイスの人口は約834万人。これは愛知県(約748万人)より多く、大阪府(約883万人)よりは少ない人数で、
今回、スイス国民約200万人がBI導入に賛成したことになる。

スイスの国民総生産額(GDP)は、約6650億ドル。東京都(約8190億ドル)より少なく、大阪府(約3240億ドル)よりは大きい。

ちなみに来年、BIの社会実験を予定しているフィンランドは、
人口(約548万人)、GDP(約2996億ドル)。
これはそれぞれ、北海道(約538万人)、埼玉県(約2500億円)に近い。

AGIを含むロボットテクノロジーの劇的進展により、社会保障のあり方が今後問われていくことになると思うが、国単位でのBI導入に時間がかかるのであれば、市町村、特に人口減少、少子高齢化に直面している町村レベルで、テクノロジーによる地域振興とBI導入による社会保障を両輪で社会実験する自治体が出てきてほしいと思う。





2016年06月01日

ワレラの時代

今世紀に入ってしばらくの間、20世紀に思い描いていたような世界になかなかなっていかないことを残念に思っていた。

プロトタイプや一部の製品化にとどまっていた技術が一気に動き始めたのは2013年頃。
ロボットをはじめ、ドローン、IoT、AI、自動運転車、(箱に収まらない大きな)3Dプリンティングなどが次々と実用化、商品化されることで、国も行政も企業も流行に遅れてはなるまいとどっと参入して、今はその大きな流れの途上にある。

そんな今の時代を自分なりに表現したのが「ワレラの時代」。

2014年の春から使っているが、その意味するところは、
・わたしとあなた
・わたしと機械(ヒトキカイ協調)
・1920年代が「狂騒の20年代」なら、その100年後の2020年代が「(機械との)競争の20年代」

そして、今後の汎用人工知能(AGI)を含むロボットテクノロジーの劇的進展を考えたとき、誰もがやりたいことを楽しんでやれる「よりクリエイティブでココロ躍る時間」を生きることができる時代になることを願って。


第3回ロボテック・シンポジウム
ロボットテクノロジーの劇的進展とベーシックインカム 究極の社会保障





2016年05月30日

ロボットテクノロジーとベーシックインカム

AGI(汎用人工知能)を含むロボットテクノロジーが急速に進展した場合、企業の生産性や生活の質の劇的向上が見込まれますが、それは同時に労働・雇用環境や人生の過ごし方・生き方を大きく変えていく可能性があります。

果たして、単純でツライ仕事はロボットなどによる自動化が進み、ヒトはより付加価値の高い業務に従事していくことになるのか。

そのとき、我々はよりクリエイティブでココロ躍る時間を過ごすことができるのか。
そして、テクノロジーが革命的に進展する時代には、究極的な社会保障・セーフティーネットであるBI(ベーシックインカム)を併存する必要があるのではないか。

そんなAGIとBIを両輪で考えるシンポジウム、
ロボットテクノロジーの劇的進展とベーシックインカム 究極の社会保障
を6月3日に天王洲アイルで開催します。





2007年09月21日

クローズド11マンス

ロボットミュージアムin名古屋の担当者から今月末での閉館と連絡のあった夜、NHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」に生物学者の長沼毅氏が登場しました。

長沼氏は火山や北極などの過酷な環境に生息する微生物を調べ、生命の起源を探ることを研究テーマにしています。

「生命の起源」という壮大なテーマに臨み、一年の半分を実地調査に出かける現場の人だけに、番組で語った言葉には心を打つものがありました。

曰く、
・研究は連戦連敗。
・一生をかける仕事では、力が入りすぎていては、とてももたない。
・高い山ほど、ゆっくり登る
・大きな問題に取り組んでいるという喜び。一生の中でどこまで成し遂げたというのは大した問題ではない。
・しない後悔より、した後悔。
・空振りは、思いっきり振れ

そして、
・行き詰ったときには、原点に戻る

参考 : オープン44マンス (06.10.12)

2006年05月02日

IKEA それでも、おおらかに

連休の合間に、「IKEA」に行きました。

オープン間もないこともあり、すごい混雑ぶりでした。
20代〜40代の消費意欲旺盛な女性が中心。
豊富な品揃えで勢いを感じるし、なによりショッピングする楽しさがあります。

船橋から幕張に至る湾岸地区は、このIKEAをはじめ、東京インテリア、大塚家具、ROOM DECOなどの家具インテリア店、また、ららぽーと、ビビットスクエア、コストコ、カルフール、イオンなどのショッピングセンターやYAMADA電機、コジマ、トイザらス、VIVAホームなどが点在し、勢いのある旬な店が多い反面、事業採算に合わず撤退する店も多い日本有数の激戦地。

それらの店を回って思うことは、いまロボットを販売するとはどういうことかということ。

「IKEA」にくるような、マニアではない普通の人々が求めるモノとは、

楽しくステキな毎日を予感させ、
シンプルで低価格、
かつ機能のしっかりした、モノ。

人々がロボットに求めるモノもきっと同じハズ。

経済産業省のロボット技術戦略マップによると、ロボットの「本格普及」は2015年以降。2010年までは業務用の警備・掃除ロボットや家庭用留守番ロボットなどの「プレ普及期」としています。

あと10数年、おおらかな気持ちでロボットを見守りたいものです。

2006年02月02日

ロボットとリスクマネジメント

松下電器産業の石油温風機による一酸化炭素中毒事故。

昨年来頻繁にTVCMを流しているにもかかわらず、対象機種15万2千台のうち、約四割に当たる6万2千台もの所在がつかめていないそうです。
同社は回収を進めるため、全国のすべての世帯と宿泊施設、計6千万軒に告知はがきを郵送する決定をしました。

リスクマネジメントの代表的な事例としてよく取り上げられるのが、1980年代にジョンソン&ジョンソン社の鎮痛剤「タイレノール」に青酸化合物が混入された死亡事件です。

このとき、J&J社の経営トップが取った措置は、「タイレノール」3,100万カプセルを市場から撤去すると共に、一般消費者向けカプセル薬すべての製造販売を中止し、すでにカプセルを購入した消費者には錠剤との無料交換を通知しました。

今回の松下電器の場合、すでに製造販売から20年もたち、現在は製造も中止されている製品が問題になったという点で、J&J社と事情は異りますが、将来、ロボットが生活になくてはならない存在になった時、20年前に製造されたロボットのプログラムがなんらかの要因で不具合となり、ある日一斉に暴れだしたとしたら・・・

今回の松下電器の事故が、今後のロボットとリスクマネジメントを考える上での良い教訓になればと思います。


参考 :
神戸新聞 2005年12月13日

産経新聞 2006年1月24日

「理念主導型経営」のすすめ



2006年01月31日

ロボットが街に出る日

先日、5年ぶりに運転免許証を更新に免許センターに行ってきました。

この5年の間に、運転中の携帯電話の使用禁止や高速道での自動二輪車の二人乗り走行許可など、道路交通法の改正が行われました。

将来、ロボットが公道で使われるようになると、インフラの整備と共に社会的なルール作りが必要になります。
その際のお手本は、やはり自動車。

車の発展と共に、道路や信号などの交通インフラ、車を乗るための運転者教育、事故の際の保険など、長い時間をかけてそれらは整備され、今日に至っています。

昨年、福岡市で公道でのロボット実証実験がスタートしました。
現在の道路交通法ではロボットが自由に公道を動き回ることはできません。
なにか事故があるといけない、人が怪我をしたら誰が責任をとるのか、など難しい問題があるようですが、実証実験で動くロボットの回りを人間が警備する、というなんともおかしなことになっています。

とはいえ、あれほど鳴り物入りで登場したセグウェイでさえ、いまだ公道を走ることができません。
ブッシュ大統領から贈られたセグウェイを小泉首相が首相官邸で乗りこなすパフォーマンスがメディアでも大きく取り上げられ、また2005年の東京モーターショーでトヨタが「i-swing」を発表したこともあり、そろそろ法改正の話も出てくるかもしれませんが。

ロボットに関してはなにかと安全問題が論議されます。
産業用ロボットの強力なイメージや実際ロボットが暴走した場合のリスクなどから、それは当然のことではあるのですが、長い年月、安全を追求してきた自動車が、日本だけでも年に8,000人もの交通死者を出していることを考えれば、行政の対応は少し慎重過ぎるという気がします。

車が事故を起こしても「交通事故」ですが、ロボットが事故を起こせば「殺人者」になる可能性があるからでしょうか。

とはいえ、やがてロボットに関する交通ルールの説明を運転免許証更新時に聴く日もやってくるでしょう。
そして将来、「免許証更新」という言葉は、「ロボット免許」のことを指すようになるかもしれませんね。


参考 : セグウェイと日本



2006年01月18日

プレミアム・ロボット

<つづき>
最近の中国で「三高」と呼ばれる「新富裕層」の人たち。
彼らもやはりブランド品が大好きなようで、車はBMW、ノートパソコンはIBM、携帯電話はNokia、香水はChanelが人気なのだそうです。
メリルリンチ社によると現在世界の高級品の12%を中国人が買っており、2015年には米国、日本を追い越して世界一になるだろうと予測しています。

中国だけでなく、ロシア、インド、ブラジルなど経済力を急進させている国の「新富裕層」もきっと同じように高級品嗜好を強めていくと思われます。

このような消費意欲旺盛な、世界の「新富裕層」をターゲットとした「プレミアム・ロボット」の開発が今後重要になっていくのではないかと思っています。

ユーザーの要望に応じてカスタマイズできる完全受注型のロボット。
価格は当然高額となりますが、安易な価格競争に陥ることなく、世界のロボット市場でいち早く独自のブランドを確立できるのではないかと思います。
それには、目の肥えた「新富裕層」を満足させるだけの機能やデザインにすぐれていることはもちろん、ロボットを購入することで「上質で豊かなライフスタイル」が描ける商品でなければなりません。
また他にはない、自分だけの「特別なロボット」である必要があります。

そうでなければ、特許件数で世界を圧倒している(※)とはいえ、「ユビキタス大国」を目指すお隣り韓国にスタートダッシュで負ける可能性があります。
韓国では今年、ホームロボット600台を無料で配布し、家庭におけるロボットの実証実験を始めます。低価格をウリとした一家に一台の「国民ロボット」の普及を目指しているようです。
ちなみに昨年、都内限定100台で販売された三菱重工のホームロボット、Wakamaruの販売数は、目標の半分程度。無料配布とはいえ600台というのは、相当な数だといえます。

2001年から2年ほど、僕は銀行のプライベートバンキング層向けサービスの企画開発に携わっていました。
そこで強く感じたことは、とても単純な結論でした。
プライベートバンキング層、つまり資産家イコール優良な消費者ではない、ということでした。
お金を持っていても消費しない人たちが大半を占めます。当然無駄なお金は使いません。
ですから、「プレミアム・ロボット」のターゲットはプライベートバンキング層ではなく、消費意欲が旺盛な「新富裕層」とすべきなのです。

※ロボット関連技術の累計出願件数(1990〜1999年)
 日本15,038件、欧州3,217件、米国2,471件。
 日本のロボット特許出願割合は、65%にもなります。


参考:
毎日新聞 2006年1月15日
毎日新聞 2006年1月16日

2006年01月15日

ロボットとCRM

雪の被害が毎日伝えられています。雪降ろしロボットがあればと多くの方が思われたことと思いますが、まだ研究の域を出ていないようですね。

僕は最近までCRM(Customer Relationship Management)やOne to Oneマーケティングの企画業務に携わっていました。

人々のライフスタイルが多様化している現在、顧客の課題やニーズを捉え、顧客ひとりひとりに最適なソリューションを提供するCRMは、多くの業種で取り入れられています。
顧客中心のマーケティングですね。それはコンピュータシステムのことではなく、システムなどを活用した売れる仕組みつくりのことです。

現在ほとんどの業種で市場が成熟しており、ポイントプログラムやコールセンターを使って、企業は顧客の満足度を向上させ、優良顧客となってもらえるようさまざまなサービスを行っています。

一般に高額商品のほうが利益が大きく、またメンテナンスなどを通じて顧客との接点を増やすことができるため、新規商品や周辺商品を提案する機会も得やすく、顧客のLife Time Value(顧客の生涯価値を最大化)を向上させることができます。
そのため住宅や車、家電など高額商品を扱う企業は、販売後も利益をあげようとリフォームやメンテナンス、カスタマイズ提案に力を入れています。

ロボットは、少子高齢化による労働力不足という時代背景や介護ロボット、家事ロボットに代表される「役立つロボット」への強いニーズもあり、また人とのインターフェースに優れていることから商品自体への愛着が沸きやすく、カスタマイズ化などによるLife Time Valueも見込めます。
本来ロボットは、顧客との良好な関係を維持していくCRMがもっとも効果を発揮する商品になるはずなのです。

ところが現在は、技術的なシーズと顧客のニーズが合致しないため、ロボットの市場がなかなか立ち上がらず、ロボット企業個々が奮闘努力しているというのが、現状です。

顧客の苦情や意見も大切なマーケティング資源なので、失敗を重ねて顧客の声を聞くことは大変重要なことですが、ロボットの場合、個々のニーズに技術が伴わなければならないだけに、顧客の声をすぐ商品に反映できないというのが悩みどころですね。
<つづく>


2006年01月14日

ロボットでメシが食えるか

<つづき>
環境イベントの企画書をもって多くの企業に働きかけていた80年代終わり頃、協賛を断られる理由の大半は、「予算がない」というものでした。バブルの時代にも関わらず、です。
そしてもうひとつ良く言われたのが、「環境はお金になりませんから」というものでした。

90年代半ば頃、それはネットの業界で言われていました。「インターネットはお金にならない」。

そして今、耳にするのは「ロボットでは食えない」というものです。

これには2種類あって、ひとつはロボットが売れず、市場がなかなか立ち上がらないことからのロボットメーカー関係者からの声。もうひとつはロボットを取材したり、調査してきたメディアやコンサルタント関係者からの声。

ロボットは、ビジュアルとしてとても良いのでメディアも好んで取り上げ、いっとき話題となりますが、役立つロボットがほしいというユーザーのニーズを満たせないため、市場が立ち上がらず、事業として採算が合わない状態が続いています。
実際多くのロボット研究者が、人に役立つロボットの登場は2010〜20年頃とみており、ユーザーを満足させるレベルまでロボット技術が進むのはもう少し先の話ということになっています。
これはロボットの安全基準が国際的にまだ統一されていないことで、トヨタ自動車をはじめ大手メーカーがホームロボットに二の足を踏んでいることやロボットシステムを容易に作るミドルウェアが標準化されていないため、ベンチャー企業の参入が難しく、そのため市場に出るロボットの種類があまりにも少ないということも要因と思われます。

だから「ロボットでは食えない」ということになるわけですが、でも僕は「環境」や「インターネット」の歴史をこの眼で見てきました。
今、「環境やネットはお金にならない」と言う人はいないと思います。いわんやロボットおや、です。

トヨタ自動車は2010年にホームロボットの販売を発表しています。松下電器や東芝など家電大手も役立つロボットの開発と実証実験を進めています。ロボティック・ライフスタイルも定着していくはずです。

自らを元気づけるためにも、「ロボットでメシが食える時代」に、早くしたいものです。
21世紀は、ロボットと宇宙への時代なのですから。