2015年06月09日

未来への応援歌

先日開催された、DARPA Robotics Challenge Finals。

Googleのロボットが参加しなかったとはいえ、世界の自律型ロボットが一堂に介することで、現在の技術水準が公正にわかったことは、良かったと思う反面、東日本大震災と福島第一原発の事故を教訓に開催されたコンペティションだっただけに、日本勢の結果に残念な気持ちがした方も多いと思う。

また、自動運転車の時(Grand Challenge,Urban Challenge)のような、技術的な飛躍も感じられなかった。
それだけ自律型ロボットは難しいということでもあるわけだけど・・・

そんな中、出場したロボットが次々と転倒する姿を収めた動画(A Celebration of Risk)が公式ホームページにUPされている。

とかくロボットの場合、こんなこともできますといった実力以上の成功譚ばかりで、失敗する映像を流すことは、まれである。
その点、この動画は今のロボットの実力はこの程度のもの、と自嘲を込めた痛快なまでの割り切り方であり、また、歴史的な記録映像としてしっかり残しておこうという意図も感じられる。
そしてなにより、リスクを負って挑戦する者への賞賛であり、アメリカの懐の深さを感じる、未来への応援歌でもあると思う。

今回の結果を糧に、今後の技術的な飛躍を期待したい。
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2012年02月26日

今はまだ、高度1/3里にも満たないチャレンジだけど

先日、大林組は約40年後に造れる建造物として宇宙エレベーターの事業構想を発表しました。

宇宙エレベーターを「地球と宇宙をつなぐ10万キロメートルのタワー」と位置づけ、すでにある技術の発展によって近い将来可能になるとしています。
東京スカイツリーの先は、果たしてどこまで行くのかを考えれば、究極的な高層建築物としての宇宙エレベーター建設は、自然な流れだと思います。

とはいえ、エレベーターを支えるケーブル(カーボンナノチューブ製)を、いかに強く、長く作るかの見通しさえたっていない現状ではありますが。

それでも、千里の道も一歩から。

宇宙エレベーター協会の大野さんから、昨年の「第3回宇宙エレベーター技術競技会」を記録した映像が届きました。(いいですよ!)

2009年に高度150mでスタートし、300m(2010年)、600m(2011年)と高くなり、そして、今年は高度1,200mに挑戦するとのこと。

東京スカイツリーを見上げ、その関心の高さを目の当たりするにつけ、「高みを極めたい」というのは人間の本性だと、つくづく思いますし、なにより、
「高いところをめざす」というのは、目標が明確で、わかりやすい。

40年もたてば、高度千里超(400万m超)も夢ではなくなっていることでしょう。


いただいたご意見につきましては、今後の検討の参考とさせていただきます (2009.5.31)
海のものとも山のものとも宙(そら)のものとも (2009.6.13)

宇宙エレベーター 公開実験
宇宙エレベーター協会 第3回ワークショップ
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2011年10月24日

がんばれ、Micro6!

明治大学の黒田洋司氏によると、iRobot社の「パックボット」は、中東の米軍施設に送られた後、実用化のために様々な現場の意見を取り入れたために、ほぼ毎週、実に年間34回もの機能改善を行ったとのこと。

黒田研究室の火山観測ロボット「Micro6」が現在、大島の三原山でフィールドテストを行っています。
その写真がなかなかかっこいいのでご紹介します。
まるで、火星にいるようです。

三原山に置かれた「Micro6」は、明治大学生田キャンパスから遠隔で走行試験をおこないましたが、
生憎、天候にめぐまれず、途中で動かなくなってしまったとのこと。
現地はしばらく天候が回復しないため、再度、現地入りして復旧作業を行うようです。

現場叩き上げこそ、ロボット実用化の近道。

がんばれ、Micro6!
(つづく)
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2011年07月15日

絶対に想定外のない世界

ROBOTECHで出展したブースに、遠隔操作で動くロボットを展示していたこともあり、
「このロボットは福島第一原発事故に出動しないのか」、「こういうロボットをいくら作っても肝心のときに使えないのでは、なんの意味があるのか」など、いろいろな意見を聞きました。

会場内ステージでは、日本原子力研究開発機構の技術者が、
「福島第一原発事故における日本原子力研究開発機構の原子力災害ロボットの対応と教訓」と題して講演を行い、結果的に原子力災害ロボット単体では使い物にならなかったと謝罪していました。

この講演を多くの人が聞いていましたが、個人的にはこの手の話はもういいやという感じでした。

それよりも、やはり面白かったのは、東京大学生産技術研究所の浦教授の話。
これまで、20台以上の自立型海中ロボット(AUV)を作り、多くの現場で実戦投入してきただけに、やはり話の迫力が違います。

海中深く自立潜航するAUVは、一旦放たれると、何が起きても助け(回収)にいくことができないため、「絶対に想定外がない」。

浦先生曰く、そこは「戦場」である。

実際、2005年に琵琶湖の生態調査をしていたAUV「淡探(たんたん)」が、突然通信が途絶えて行方不明になったことがありました。
2日後に浮上して見つかったので良かったものの、製造費2億7000万円が一瞬でパーになるところでした。
さすがに「寿命が10年縮む」思いだったそうです。

浦先生は大震災後、東北沿岸26ヶ所の海底を4日間に渡り、探査。漁業の復興に役立つ情報を提供することができました。
海中で何がロボットに影響するかわからなったので、今回は不本意ながら25年前に造ったケーブル付きの海中ロボット(ROV)を使用したとのこと。

浦先生は今日からまた、宮古の海底探査に向かいました。


海の一攫千金ロボット (2006.7.17)
海底ふたり (2006.10.31)
OCEAN BB (2008.3.9)
「冒険」という響き (2010.11.26)
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2011年06月16日

被災された高齢者全員に国から「パロ」の無償提供があってもいいくらいだ

大和ハウス工業が東日本大震災の被災地にある高齢者向け施設に「パロ」(パロの項参照)を2年間無償貸与することにしたようです。

被災地の避難所に「パロ」を持参したら、とても喜んでもらえたということは、大和ハウス工業の担当の方からはお聞きしていました。

「パロ」は一体35万円。

それを50体・2年間無償で貸し出すと聞くと、ずいぶん太っ腹なと思うかもしれませんが、大和ハウス工業は被災地の仮設住宅の建設を請け負っていますし、また、グループ企業には病院や介護施設のコンサルを行うシルバーエイジ研究所や有料老人ホームを運営する寿恵会などもあり、「パロ」の無償貸与を通じて、行政や地域コミュニティとのより一層の結びつきを考えての事かと思います。

「パロ」と触れ合うことで深い心の傷や哀しみを負った人が少しでも癒され、一時でも不安を忘れることができるなら、それはとてもうれしいこと。

被災された高齢者全員に国から「パロ」の無償提供があってもいいくらいです。

これを機に、具体的に何に役立つのかはわからないけれど、そばに居ることで、気持ちを明るくするコミュニケーションロボットの活用がもっと増えればと思います。


KYRなロボット(2007.11.14)
ロボットの効用のひとつに(2008.4.23)
実用的ではないけど、居るだけで心が癒されるロボット(2009.1.8)
ホッとする存在としてのロボット(2010.2.7)
アザラシ・ファンタジー(2010.2.11)
生きているのか、それとも死んでいたのか、なんて(2010.8.4)
ロボットの水平展開(2010.11.15)
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2011年06月08日

ハードから、ソフトへ 

昨年度に引き続き行われる神奈川県の「介護ロボット普及推進事業」。
その介護施設向けの「事業説明会」が、来週横浜で開催されます。

今年度、介護施設に無料貸与されるのは、7機種(予定)。
そのうち、「HAL」と「パロ」は、5ヵ月間貸与され、他の5機種(「ヒューマニー」(排泄介助)や「リラウェーブ」(床ずれ予防)など)については、施設から使用の申し出があった場合に限り、1〜3ヶ月間貸与されることになっています。

昨年度が、ハード(ロボット)の貸出しとその評価、及び介護現場の意識調査が中心だったのに対し、今年度はハードの貸出しを増やす(3機種から5機種に)一方、ロボット導入のためのソフト面の強化が中心となる予定です。

具体的には、ロボット導入のためのガイドラインや研修ツールの作成、ロボットに関する正しい知識を提供する仕組みづくりとロボット導入に興味を示した施設への、より詳細なヒヤリングなど。

東京電力福島第一原発事故では、国民からの強い期待にも関わらず、これまでなんの働きもできなかった日本のロボット。日本はロボット先進国だと思いこんでいた多くの人々の気持ちを裏切り、深く落胆させてしまいました。
(災害対応支援ロボット「Quince」の現場投入が発表されましたが、まったく遅きに失した感は否めません)

どうすれば、本当にロボットを社会に導入していくことができるのか。
ハードから、ソフトへ。
地に足の着いた、地道な取り組みをしていかなければなりません。


ロボット導入の呼び水となり、さきがけとなるか (2010.9.16)
神奈川県で、3つ (2011.4.23)
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2011年05月15日

ロボットの標準化を必ず勝ちとるという「気構え」と「迫力ある」姿勢を具体的に見せてほしい

ネットワークロボットフォーラム(NRF)の土井標準分科会長の報告(※1)によると、位置情報(OMG、ISO)、空間情報(OGC)、ネットワークロボットプラットフォーム(ITU-T)、対話サービス(OMG)などのロボットに関わる標準化団体で、韓国や中国が発言権を強めており、日本の存在感が薄くなりつつあるといいます。

これまで日本もロボットの国際標準化策定には積極的に関わり、日本主導で標準内容を策定する意向で取り組んでいますが、震災の影響で国の優先順位が震災復興に向けられており、これまで標準化策定に深く関わってきた産業技術総合研究所や、大手民間企業の担当者が標準化の国際会議に欠席することが多くなっているようです。

その反面、韓国は成果主義を導入して担当係官を増強し、自国優位に標準化を策定しようとしていますし、高齢者・障害者対応ロボットシステムや高度教育・エンターテインメントロボットの開発・普及を国家科学技術戦略に掲げる中国も標準化策定に積極的に関わり出してきています。

2012年の夏にもPersonal Care Robotの国際的な安全規格(※2)が制定される見通しで、ロボットの標準化は、今まさに正念場。

クルマ(モビリティ)のロボット化やスマートシティでのロボット技術の推進など、ロボットの標準化は、医療、福祉、生活、インフラなど広範囲にわたり、さまざまな省庁が横断的にからむだけに、
サービスという視点が欠かせない』(萩田技術部会長)わけですが、
震災対応に追われている間に「漁夫の利」とされることのないよう、国は、ロボットの標準化を必ず勝ちとるという「気構え」と「迫力ある」姿勢を具体的に見せてほしいと思います。

(※1) NRF標準分科会 2010年度報告(2011.5.13)  (  )内は標準化団体の略称
(※2)ISO 13482 Robots and robotic devices – Safety requirements – Non-medical personal care robot

ロボット普及のキモ (2006.10.13)
大きな一歩、でもカケヒキジョーズには気をつけて (2006.10.14)
孤軍奮闘ではなく、他国を圧倒する物量作戦にこそ (2009.11.27)
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2011年05月08日

震災・原発事故におけるロボット活用について、あきらかになったこと(4)

(つづき)
東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故におけるロボットの活用について、その活動報告会公開シンポジウムが行われました。

その中であきらかになったこと。

(4)日本の災害対策ロボットの課題と中長期的に果たす役割

・災害対策技術を開発し、それを国家規模で運用するためには消防や自衛隊との連携が必要である。
・ロボットの評価基準ができれば自治体への導入も進むのではないか。
・フランスでは事故が起こった場合に備え、法律に基づいてロボットの開発、操縦者の養成・育成、事故訓練などをする組織(Group Intra※)がある。日本にも同様の組織を作る必要がある。
・災害対策ロボットを国家規模で運用する組織を作るならば、防衛と災害対策を自衛隊の任務と位置づけ、その上で災害分野に限った部門と大学等の研究機関の連携を築くように検討がなされるべきである。
・長期的な震災の復興にむけてロボット技術だけでなく関連する技術について広く知恵を集め、そこから適時に、適した技術、適した運用を提案してゆくシステムの枠組みを作る必要がある。

ロボット研究者は自らよく動き、本当によくやっていると思います。

しかし、災害対策ロボットは「即、役立つこと」が必須に求められる分野。

個々人で動くことの限界もあきらかになっており、東京大学の中村氏が指摘されているように、
「ロボット技術に限らず科学技術の突破力を引き出すことのできる社会のシステムを作る」必要性を感じます。

※Group Intra
フランスの電力庁、原子力庁、核燃料公社の共同出資で1988年に設立。
事故が起こった場合、24時間以内に専門職員と設備を派遣、輸送。施設専属のロボットオペレーターが想定される事故に対処できるよう訓練を積んでいる。遠隔操作ロボットは発電施設の運転室内操作盤の操作や配管の脱着などの工事作業、屋外の土木工事対応など、想定される緊急事態に備えている。


能登半島地震と、遠い夜明け (2007.3.26)
救助用ロボット (2007.6.18)
レスキューロボット実戦配備 中期5ヶ年計画 (2007.8.6)
アーバンとガンダムに見る両用技術戦略の大きすぎる溝 (2007.11.9)
前へ、ロボット (2007.11.18)
ロボットの3Dとアンダーウォーター (2008.10.14)
地震・雷・ロボット・システム (2009.8.12)
原子力発電所オールインワンパッケージ (2010.1.24)
テクノロジーを用いて大きな問題を解決する (2010.10.15)
この重大な危機に、ロボットを使わなくて、いつ使うのか。 (2011.3.16)
ネズミ一匹とならんことを (2011.4.13)
3月11日以前と以後も、ロボット関係者の心のありかたは同じなのか (2011.4.14)
震災・原発事故におけるロボット活用について、あきらかになったこと(1) (2011.5.2)
震災・原発事故におけるロボット活用について、あきらかになったこと(2) (2011.5.4)
震災・原発事故におけるロボット活用について、あきらかになったこと(3) (2011.5.6)

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2011年05月06日

震災・原発事故におけるロボット活用について、あきらかになったこと(3)

(つづき)
東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故におけるロボットの活用について、その活動報告会公開シンポジウムが行われました。

その中であきらかになったこと。

(3)原発事故で導入する日本のロボットの動向

A.どんなロボットが検討されているのか

・レスキューロボット「Quince」、「T-53援竜」から、メンタルコミットメントロボット「パロ」まで、様々なロボットが候補に挙がっている。

B.いつ頃投入される見込みか

・現場の状況がどんどん変わっており、優先順位がどうなっていくかわからないため、どのロボットがいつ投入されるのか、わからない。
・候補に挙がっている中ではQuinceが最右翼だと思うが、その投入予定はわからない。
・投入された場合は、本格的な操作訓練に3日、その他ミッションに合わせた訓練が数日必要になる。

C.Quinceの優れたところはどこか、また使用用途はなにか

・高い運動性能。階段を登る事が出来、特に瓦礫走破が巧み。
・情報収集がメイン。屋外の線量率測定、原子炉建屋内の状況調査と軽作業。
・電波の関係もあり、2台1組での投入が検討されている。既に福島第一原発と構造の同じ浜岡原発でシミュレーションを行っている。

D.投入後、Quinceは繰り返し使用できるのか

・除染して繰り返し使いたいと考えているが、線量が強い場合は使い切って捨てることになる。

(つづく)
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2011年05月04日

震災・原発事故におけるロボット活用について、あきらかになったこと(2)

(つづき)
東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故におけるロボットの活用について、その活動報告会公開シンポジウムが行われました。

その中であきらかになったこと。

(2)原発事故での活動

これまでに投入されたロボット(無人機)

4月6日
無人化施工機械 バックホウ、クローラダンプなど4台(総数17台)
大成建設、鹿島建設、清水建設JV

4月10日
小型無人ヘリコプター 1台
T-Hawk (米ハニーウェル社)

4月17日、18日
モニタリングロボット 2台
Packbot (米アイロボット社)

追記:4月26日、5月3日にも投入


A.何故もっと早くロボットを投入出来なかったのか

・安易に導入し、放射線でロボットが故障すれば、その後の作業の妨げとなり、全体の作業が遅れる。
・瓦礫が散乱している。
・無線電波が届かない。放射線が外気に出ないよう、建物内が入りくんだ作りになっている。
・ロボットを操作するための訓練が必要。
 
B.何故アメリカのロボット(Packbot)が最初に使われたのか

・行うミッションでどれが一番最適なロボットか検討した結果、米軍に3000台が配備され、実績のあるPackbotが選ばれた。また、オバマ大統領の強い意向も反映されたのではないか。

C.何故過去の原子力ロボット関連プロジェクトで開発したロボットを使わないのか

・点検・メンテナンスロボットとして開発された専用機であり、災害対策などさまざまな状況に対応できる汎用的機能は持っていない。
・当時は実用機としてのニーズがなかったため、要素技術として開発。プラントが故障しなければ、ロボットは必要ない。
・維持、運用するプロジェクトまで進まなかった(費用がでなかった)。

(つづく)
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2011年05月02日

震災・原発事故におけるロボット活用について、あきらかになったこと(1)

東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故におけるロボットの活用について、その活動報告会公開シンポジウムが行われました。

その中であきらかになったこと。

(1)震災での活動

国際レスキューシステム研究機構(IRS)のロボット研究者たちの対応と行動は、素早かった。

震災当日(3月11日)、アメリカのCRASAR( Center of Robot-Assisted Search and Rescue災害対応訓練所)でレスキューロボット「Quince」の実証試験を行っていた田所会長は、震災の報を聞くと直ちにCRASARに出動を要請。

翌12日には、テキサスA&M大学のRobin Murphy(ロビン・マーフィー)教授(9.11などの災害現場にロボットを出動させた実績あり)に支援の意向を知らせた。

日本に急ぎ戻り、13日に仙台市消防局に「能動スコープカメラ」の適用を申し込み、14日には東北経済産業局、宮城県、仙台市に適用可能なロボットのリストを配布。「Quince」をスタンバイした。
15日から19日にかけては久慈市や八戸港、鹿島コンビナートなどでニーズ調査も実施している。

しかし、自治体から倒壊家屋への支援要請は、なかった。

その理由として、
・阪神淡路大震災と違い、建物崩壊で亡くなった人が少なかった。
・津波で取り残された人を助け出すことが優先された。
・津波による被害は大規模かつ広範囲で自治体もどこから探していいのかわからない状況だった。役場にも電話が通じず、ほとんどの人が被災者となり、対応できる職員も居なかった。
・被災現場へのアクセスが格段に悪かった、など。

その後、港の復旧にニーズがあることがわかり、4月19日から23日にかけて沿岸部の海中の遺体を捜索する水中ロボットによる調査を実施した。
これは、自治体(宮城県三陸町の町長と岩手県災害対策本部)からの要請で行う初めてのケースとなった。
(つづく)
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2011年04月14日

3月11日以前と以後も、ロボット関係者の心のありかたは同じなのか

これだけ大きな出来事(大震災・原発事故)が起こると、誰もが自分で出来ることがあれば何かしたい、困っている人があれば手を差し伸べたいと思い、多くの方が積極的に行動を起こしています。

そんな中、山田洋次監督が新作映画『東京家族』の製作を延期し、2012年春の東京を舞台にした物語に脚本を見直すことが発表されました。

延期した理由について監督は、
「一年以上の歳月をかけて入念に準備を整え、間近なクランクインを控えてスタッフやキャストの気力が充実しきっていた時、3月11日の大災害が発生しました。

このままそ知らぬ顔で既に完成している脚本に従って撮影していいのだろうか。いや、もしかして3月11日以前と以後の東京の、あるいは日本の人々の心のありかたは違ってしまうのではないか

僕は何日も悩み、会社ともくり返し相談した結果、それこそ苦渋の選択をしました。
撮影を中断して今年の終わりまでにこの国の様子を見よう、その時点で脚本を全面的に見直した上で戦後最大の災害を経た東京、つまり2012年の春の東京を舞台にした物語をこそ描くべきだ」と。

山田監督は1970年に長崎県の小さな島から北海道の開拓村まで旅する一家の姿を見つめた映画『家族』の中で、日本万国博覧会開催中の大阪や公害に悩む東京など、高度経済成長期の変わりゆく「今」の日本を描きました。

その山田監督が「3月11日以前と以後の東京の、あるいは日本の人々の心のありかたは違ってしまうのではないか」「撮影を中断して今年の終わりまでにこの国の様子を見よう」と決断したのにはとても共感しますし、監督が2012年春の東京をどのように描くか今から期待したいと思いました。

同じ日、 
日本学術会議の東日本大震災対策委員会は、福島第一原子力発電所の事故対策にロボット技術を活用すべき、との提言(※)を公表しました。

現場各所の放射線量監視、画像撮影、試料採取、また、廃炉作業の一部完全自動化、新規ロボットや新運用システムの開発、自動移動ロボットによる連続巡回モニタリングと自立作業ロボットによる除染作業の一部完全自動化、そして災害対策支援ロボットを維持・保守・改良し運用訓練を行う恒常的な組織・システムの構築 などなど。

まったくタイムリー、ではあります。

原発廃炉までには少なくとも10年、汚染除去後の更地まで30〜100年もかかるといわれている福島第一原発の事故処理。
提言通りにいけば、ロボット関係者は数十年、食いっぱくれがない、ウマすぎる商売になるわけです。

しかし、この危急時にこれまで開発してきた日本のロボットは全く役に立ちませんでした。

多額のプロジェクト予算で開発だけを繰り返し、「絵」になることでマスコミ受けだけは良く、本気で普及・運用を怠ってきたツケがあからさまになっていながら、その反省も、総括もなく、混乱に乗じて、カネずるを引っ張りこもうという魂胆が見え隠れしていると感じます。

3月11日以前と以後も、ロボット関係者の心のありかたは同じなのか

(※)
提言
補足説明

ネズミ一匹とならんことを (2011.4.13)
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2011年04月13日

ネズミ一匹とならんことを

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、連日、国内外のロボット(無人化技術含む)を現場に導入しよう(導入した)というニュースが流れています。

●導入している(導入した)と報道されているロボット

・RQ-16A Tホーク(米・ハネウェル社) 軍事用無人ヘリコプター
・RQ-4グローバルホーク(米・ノースロップ・グラマン社) 軍事用無人偵察機
・無人飛行機(エア・フォート・サービスが運用)
・無人油圧ショベル(建設無人化施工協会) 無線による遠隔操作システム

●検討中又は検討されたと報道されているロボット

・タイロン(米・キネティック社) 爆発物処理ロボット
・パックポッド、ウォーリアー (米・アイロボット社) 爆発物処理/運搬ロボット
・遠隔操作ロボット(独)  原子炉の修復や汚染物質除去
・遠隔操作ロボット(仏・アルバ社)  原子炉の修復や汚染物質除去
・防災モニタリングロボット(原子力安全技術センター) 放射線モニタリングなど
・クインス、ケナフなど(国際レスキューシステム研究機構) レスキューロボット 
・能動スコープカメラ(国際レスキューシステム研究機構)  レスキューロボット
・アンカーダイバー3号機 AK-3(東京工業大学)水中探査ロボット

無人化システムの活用を検討する「リモートコントロールプロジェクトチーム」も発足し、現場に投入可能なロボットや無人化システムを精査して、東京電力との調整が始められており、
また、災害対策に寄与するロボット技術を発信する「対災害ロボティクス・タスクフォース」(日本ロボット学会、日本機械学会、計測自動制御学会)も動き出しています。

この重大な危機に多くのロボットが現場に導入され、国民の期待に応える結果(効果)を出すことで、ロボットが信頼を得、これを機に今後様々なロボットの導入、普及に弾みがつくなら、こんなにうれしいことはありません。

震災と原発事故を目の当たりにして、ロボット関係者もなんとか現場の役に立ちたい、あるいはここで名をあげておきたいと熱を帯びている状況かと思いますが、使う側からすれば、信頼できないものに命(責任・評判含む)を預けるわけにはいかないので、大山鳴動して鼠一匹、
その結果として、研究のための開発、メシの種だけの開発にまた多額の税金が使われることになりはしまいか、科学技術という甘い汁に群がる文化を身にまとった黒い輩がまた一層増えやしないか、心配でもあります。


この重大な危機に、ロボットを使わなくて、いつ使うのか。 (2011.3.16)
ロボット文化人 (2006.4.10)
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2011年03月16日

この重大な危機に、ロボットを使わなくて、いつ使うのか。

原子力安全技術センターが所有する2機の防災モニタリングロボットを東京電力に貸し出したようです。

そのロボットは、
モニロボA」(ガンマ線計測及び赤外線カメラによる表面温度撮影など)と、
モニロボB」(ガンマ線計測及び中性子線量測定、放射能測定のためのダスト収集、可燃ガス濃度検知など)。

モニロボ専用の運搬車で災害現場に接近。
モニロボは遠隔操作 で、毎分最大40mでの自走可能。
また、ロボットが収集した計測結果や各種画像は運搬車内に設置したモニターで確認・記録をすることができます。

遅きに失するぎりぎりの登場ですが、やっと災害現場でロボットが役立つ可能性があります。

国はこれまで、原子力プラント内作業用ロボットやレスキューロボットなどの「極限作業ロボット」の開発に何十億円もの税金をつぎ込んできました。

この重大な危機に、それらのロボットを使わなくて、いつ使うのか。

人に代わって、危険な作業を代替するのは、ロボットの本来の使命であるはず。

今こそ、ロボットが活躍する姿をみせてほしい。

それにしても、遠隔操作で放水できるロボット放水車1台投入出来ないのは、一体どういうことなのか。


参考 : 朝日新聞(3月16日)
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2011年03月01日

今年のロボット大賞候補になるより、2013年問題

NEDOのロボットプロジェクト成果報告会が行われました。

報告されたのは、平成18年度から22年度に実施された「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」(以下Aプロ)の7件と、
基盤ロボット技術活用型オープンイノベーション促進プロジェクト」(平成20年度〜22年度)の1件。

報告内容自体に目新しいものはありませんでしたが、総額20億円以上の予算で進められたAプロは、2013年までを目途に実用化、商品化を目指していくことになります。

とはいえ、実際のところ、商品化のニオイを感じるモノもあれば、どうかなというモノもあり、
Aプロのプロジェクトリーダー・平井氏も述べていたように、肝心なのはそれらが実社会でちゃんと使われるモノになること。
それらが社会に受け入れられ、普及することで我々の生活がより豊かになり、幸せが実感できる、そのことが重要です。

「おわり」ではなく、「はじまり」。

このプロジェクトの真の成果を見守りたいと思います。
(つづく)


チャレンジングなミッション (2006.4.21)
ロボット適応分野の拡大、或いは市場失敗に備えて (2006.4.24)
理想のロボット (2006.4.28)
残された10年 (2006.6.12)
製造極限生活 (2006.8.8)
一日20時間、3年以上壊れないロボット (2006.8. 9)
どれも大事。でも市場ニーズがあるのは・・・ (2006.8.14)
「ロボティック・ライフスタイル」序曲 (2006.8.15)
後は「やるだけ」 (2006.8.16)
両輪で考える癖 (2007.4.2)
アカデミック・ロードマップ U (2007.9.2)
自動車業界頼み市場規模予測 (2007.9.5)
ロボットの点と面 (2008.9.29)
「モノづくりとしてのロボット」の片思い (2009.4.8)
人々がより豊かで幸せになれる社会生活のために (2011.1.7)
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2010年10月15日

テクノロジーを用いて大きな問題を解決する

行楽の季節。地方に出かけると誠に立派ではあるけれど、驚くほど車を見かねない道路に出合います。

Googleは、ロボットカーの技術開発を進めていることを発表しました。
ロボットカーの開発には「DARPA Grand Challenge」の研究者が多数参加しており、公道を使用してすでに14万マイル(約22万5千キロ)以上の試験走行を行っているようです。

Googleが、ロボットカーの開発を行う目的は明快です。
テクノロジーを用いて大きな問題を解決する」ため。

ロボットカーが実用化されることで、『毎年世界で120万人以上が亡くなる「交通事故」を半減し、効率的な移動によって「交通渋滞」を減らし、エネルギー消費の削減と生産性に多くの時間を割り当てることが出来る』から。

片や日本。
つくば市が年内の実施を目指していたモビリティロボットの公道走行実験(※)が、来春以降にずれ込むことが明らかになりました。

その一番の原因は、モビリティロボットが現行の道路交通法に適用していないため。

シニアカーに乗った老人の転倒死亡事故や、自転車と歩行者との接触事故が増えていることも警察が神経質になっている原因かもしれませんが、モビリティロボットを活用した新しい社会システム全体の構築をいくら謳っても、極めて限定的な実証実験さえままならないなら、モビリティロボットの社会的有効性や安全性、社会受容性等を検証することさえできません。

「テクノロジーを用いて大きな問題を解決する」、イノベーションにはこういう視点こそ必要だし、そうでなければ、機能だけはやたらと高度であるけれど、閉じられた単体(モノづくり)で終わってしまいます。

(※)つくば市は2009年1月、「搭乗型移動支援ロボット公道走行実証実験特区」の認定をわが国で初めて受けた。


グランド・チャレンジ (2006.1.10)
グランド・チャレンジU インテルの戦略 (2006.1.25)
ロボットが街に出る日 (2006.1.31)
第3回 グランドチャレンジ (2006.5.9)
選挙カーからの「お願い」より、セグウェイへの「願い」 (2007.4.16)
ロボットの社会参加と共有空間 (2007.11.22)
料金割引より、移動手段の革命 (2009.3.27)
本当の想像力 (2009.5.24)
できるのに、できないジレンマ (2010.5.20)
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2010年09月16日

ロボット導入の呼び水となり、さきがけとなるか

今月末から3ヶ月をかけて実施される神奈川県の「介護・医療分野ロボット普及推進事業」。

これは、公募により選ばれた7施設に対し、「HAL福祉用」、「眠りSCAN」「パロ」 、「りーだぶる」を無償貸与し、貸与先にロボット導入前、導入後に関する詳細な評価シートを記入してもらい、介護現場の負担軽減等の可能性について実証を行うというもの。
併せて、県内約500の介護施設にロボット導入に対するニーズ調査を行い、その課題と解決策について検討していきます。

介護福祉分野は、ロボットの早期導入が最も期待されている分野。

先日も、経産省と厚労省が介護・福祉現場のニーズをロボット開発に役立てる「介護・福祉ロボット開発・普及支援プロジェクト検討会」の初会合を開催したばかり。

「介護・医療分野ロボット普及推進事業」を立ち上げた神奈川県の担当者を始め、事業推進にかかわるメンバーはかなりヤル気のある方々なので、この普及推進事業が呼び水となって、介護福祉分野へのロボット導入が少しでも進んでいければと思います。

●モデル事業説明会が9月21日(火)に波止場会館で開催される。


障害者の次世代自立支援機器とそのニーズに応えるために (2010.6.24)
ユーザー担当者の言葉(1) (2008.3.3)
ユーザー担当者の言葉(2) (2008.3.6)
自立支援をめぐる言葉(1)  (2007.3.15)
自立支援をめぐる言葉(2) (2007.3.16)
自立支援をめぐる言葉(3) (2007.3.18)
自立支援ロボットに求められているもの (2007.7.25)
バリアフリー、Intimateな技術の活用 (2007.7.27)
飯の種では、たまらない (2009.6.21)
「人の役に立つロボット」始動! (2008.10.8)
人に役立つロボット最前線 (2006.10.1)
後は「やるだけ」 (2006.8.16)
 「RI−MAN」へのドロップキック (2006.4.1)
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2010年03月07日

禍転じて福と為せ

メーカーのリスクマネジメントの難しさをあらためて思い知らされたトヨタ車のリコール問題。
初動対応の甘さとトップの説明の遅れが傷を大きくしてしまいました。

トヨタはアメリカの公聴会で電子制御スロットル・システムの不具合について「システムに異常が生じたときに燃料の供給を止めるなどのフェイルセーフが働く」ことを社内の検査で繰り返し行っており、安全性は確保されていると説明しました。

製品の安全性の確保については、大きくわけて「機能安全」※1と「本質安全」※2とがありますが、
複雑な電子システムの塊となったクルマは「機能安全」を高めることが要求され、またそれが自社内での評価でなく、外部の機関により公に認証されることが必要になってきています。

しかし、日本を代表する典型的なモノづくりのメーカーであるトヨタは、その底流に職人的な「本質安全」の思想があるようで、それはモノづくりにとっては大切なことでも、電子化され、グローバル化してしまった現代のクルマにとっては、落とし穴に陥る危険性があるということでしょう。

サービスロボットの安全性の確保は、音声認識技術と共にそれに縛られていると袋小路に陥る長年の懸案事項ですが、昨年「生活支援ロボット実用化プロジェクト」(NEDO)がスタートし、日本としてのサービスロボットの安全性の基準づくりが進められています。

関係者によると「機能安全を満たしたロボットを作り、それを公正な外部機関が認証する」ドイツ型の安全性確保の方向に向かうのではないかということです。 

サービスロボットの安全性について神経質なまで慎重な日本のモノづくり企業は、今回のトヨタ車のリコール問題によって、ますます強固な安全神話の殻に閉じこもる傾向にありますが、禍転じて福と為す、積極的な行動を求めたいと思います。

そして同時に、ロボットを使うユーザーもリスクを受け入れる覚悟と、行政によるリスクを許容する社会マインドの醸成支援も必要です。

(※1)機能安全  機能が故障した場合でもシステムの安全性を確保する仕組み。
(※2)本質安全  危険の原因を取り除くことによって安全性を確保する仕組み。

ロボット実用化の大黒柱につき、 (2008.12.22)
リスクの実績主義と絶対主義 (2009.1.20)
階層で防御する (2009.1.29)
「モノづくりとしてのロボット」の片思い (2009.4. 8)
孤軍奮闘ではなく、他国を圧倒する物量作戦にこそ (2009.11.27)
しかと見る必要 (2008.12.10)
ロボットが街に出る日 (2006.1.31)
ロボットとリスクマネジメント (2006.2.2)
「効用」のないロボットなんて (2006.5.23)
一日3機のジャンボジェットが墜落 (2006.5.31)
シンドラーのリスク (2006.6.6)
シンドラーのリスク U (2006.6.8)
日本の一番のアキレス腱 (2007.3.11)
ロボットに関するいくつかの報告書 B (2007.5.9)
切りたくても切れない関係 (2007.10.25)
血液検体搬送ロボットシステム (2007.12.5)
22年間で、83件がもつ意味 (2008.3.18)
ロボット三国同盟 (2008.5.29)
ロボット・オリエンテーション (2008.9.20)
電動アシスト自転車が、いく (2008.10.5)
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2009年11月27日

孤軍奮闘ではなく、他国を圧倒する物量作戦にこそ

5世紀に西ローマ帝国が滅んだ後、その豊かな生活水準に戻るには18世紀の産業革命までかかったと言われています。ヴェスヴィオ火山の噴火で埋もれたポンペイの遺跡を見ても、そこには現代の暮らしと変わらない(ある意味それ以上の)豊かな人々の暮らしぶりが伺え、現代人と古代ローマ人との差は、医療と科学技術の違いにしか過ぎないとさえ感じます。

「事業仕分けに科学技術はなじまない」、「科学技術創造立国に逆行する」など、事業仕分けによる科学技術予算の削減に対しては、さまざまな意見が出ていますが、ことサービスロボットに関していえば、今もっとも重要なのは、安全性やミドルウェアなどについての国際規格、その標準化を勝ち取ることです。

標準化作業の会議には日本ももちろん毎回参加しており、2006年にはアメリカ、韓国と共に標準化仕様案を策定してます。今のところは日本が主導している状態ではあるようですが、日本から会議に参加しているメンバーが数人であるのに対して、アメリカや韓国はその数倍の人数を参加させており、特に韓国の積極さが目立つようです。

モノづくりにはカネと力を入れる日本ですが、肝心の標準化についてはこれまでも外国にもっていかれて手痛い思いをしてきました。

特許や技術でリードしている日本のサービスロボットが同じ轍を踏むわけにはいきません。

この数年が勝負です。

要素技術はもう十分開発してきました。
経済産業省をはじめ、国の機関も標準化の重要性は十分理解しているわけですから、ここはいち担当者だけが孤軍奮闘するのではなく、他国を圧倒する物量作戦に打って出るべきです。
業界団体もこういうときこそもっと声をあげて、標準化の会議に「大人数」で押し掛けるくらいの予算を要求し、なんとしても標準化の主導権を勝ち取るんだという強い気構えと執着心を見せてほしいと思います。


ロボット普及のキモ (2006.10.13)
大きな一歩、でもカケヒキジョーズには気をつけて (2006.10.14)
日本の一番のアキレス腱 (2007.3.11)
「事業仕分け」、傍聴しました。 (2009.11.17)


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2009年09月11日

定時運行、当たり前の難しさ

どのような職種、分野に関わらず、本当にすばらしいプロの現場というのは、傍から見ると以外なほど静かなものです。

HTV技術実証機を搭載したH-UBロケット試験機が「定刻」通り、静かに打上げられました。
あっさり発射されたというのが映像を見ての印象です。

もちろん、この「あっさり発射」の陰には、関係者の計り知れない努力と綿密な計画、何十回にもわたる打ち上げシミュレーションがあったことと思います。

それゆえ、この「あっさり発射」感は重要です。

H-UBは、HTVを国際宇宙ステーションに運ぶだけでなく、大型の人工衛星を宇宙に届ける打ち上げ輸送機です。「輸送」である以上、「定刻」に出発して、「定刻」に到着するのが理想であり、使命です。

商業打上げ輸送の国際的な競争を考えた場合、この「定時運行」は種子島宇宙センターという立地上の不利な条件を補ううえで、大きな要素になることと思います。

技術がありながら、宇宙の商業化では欧州やロシアに遅れをとり、最近ではインドや中国にさえ追い上げられている日本にとって、当たり前のように「定刻」に打ち上げられた今回のH-UBロケットの「定時運行」は、とても大きな成果だと思います。

分離したHTVが、ISSにも静かにドッキングすることを願っています。


みつびし印のない大型科学技術プロジェクトは、ない (2007.10.12)
史上最大級のロボット (2009.9.8)
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