2011年02月14日

男と女 Y

フランスの哲学者アンドレ・ゴルツは83歳の時、妻ドリーヌに宛て最後のラブレター(愛の物語)を書きます。

「君はもうすぐ82歳になる。身長は6センチも縮み、体重は45キロしかない。それでも変わらず美しく、優雅で、いとおしい。僕たちは一緒に暮らし始めて58年になる、しかし今ほど君を愛したことはない。僕の胸のここにはぽっかり穴が空いていて、僕に寄り添ってくれる君の温かい身体だけがそれを埋めてくれる」

印象的な書き出しではじまるこの物語は、偶然の出会い、困窮する生活、激動の時代など、二人が歩んだ58年を振り返っていきます。

83歳になって、なぜゴルツは愛の物語を書こうとしたのか。

若い頃に書いた小説「裏切者」の中でドリーヌを登場させますが、彼女を真実とは異なる哀れな女として描いてしまいます。
それは文章にしてたった11行のことでしたが、ゴルツはその小説が人に読まれるたびに、自分が彼女を何度も中傷してしまうことに悩み、どうすればこれに終止符を打つことが出来るのか、ずっと思い患います。

「一体この11行を書いた時の僕とは何者なのか。あの7年間を、本当の意味で君が僕のためにしてくれたあの年月を、取り戻したいという狂おしい欲求を感じている」

やがてドリーヌが不治の病を患ったことからゴルツは、「互いの力によってそれぞれが自分自身を取り戻すことができた」2人の真実の物語を描くことを決意します。

この物語は次の文章で締めくくられます。
「僕たちは二人とも、どちらかが先に死んだら、その先を生き延びたくはない。叶わないこととはいえ、もう一度人生を送れるならば二人で一緒に送りたい、とよく語り合っていた」

出版されて1年後、二人は並んで眠るように旅たちました。

「要するに本質的なことはただ一つ、君と一緒にいることだ (中略) 
君がその本質なのであって、君がここにいてくれる限り大切であると思えることもすべて、もし君がいなくなるようなことになれば、もはや何の意味も何の重要性もなくなってしまう」

「愛」について、男はどうしていつも気付くのが遅く、後悔するのだろう。


参考:「また君に恋をした」(アンドレ・ゴルツ著 水声社)

男と女 X (2010.5.31)

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2011年01月16日

奴隷何人分と換算する国民性とタイガーマスク現象

タイガーマスク現象の拡がりは、人によって様々な見方があると思いますが、ポイントはアニメの主人公の境遇(ストーリー)に重ね合わせた行動が共感のベースになっているところ。
東京スカイツリーを当たり前のようにゆるキャラにし、小惑星探査機「はやぶさ」さえ擬人化してしまう国民性に通じるものを感じます。

サイエンスライターのアルベルト・アンジェラ氏(※)によると、古代ローマの平均的な邸宅では5〜12人の奴隷を使っていたそうです。

彼らの役割は、
調理、洗濯、清掃、水汲み、灯り持ち、運搬、代筆、代読、余興、理容・美容など多岐にわたり、奴隷が「肉と骨でできたエネルギー源」でした。

現代社会では、家庭内の電気コンセントが「奴隷30人分の労働力」と同じエネルギーを供給しているそうで、アンジェラ氏は古代ローマでの奴隷について、
『電気店(「奴隷市場」)で選んで購入し、大切に使わないだけでなく、思い通りに動かない場合には手荒く扱うこともあり、そのこともあまり気にとめない。そして、故障したり古くなったりするとお払い箱にし、新しいものに買い替える。しかも、値段が高いと文句を言いながら』と、述べています。

掃除機や洗濯機などの電化製品は、いわば「人工的に造られた奴隷」なのだそうです。

欧米と日本では、ロボット(特にヒューマノイド)についての認識が違うと良く言われますが、
電化製品を奴隷何人分と換算する国民性と、機械や建物さえ擬人化する国民性の違いは思いの他大きいのかもしれません。


※「古代ローマ人の24時間」(アルベルト・アンジェラ著 河出書房新書)
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2010年11月24日

家電量販店への逆襲 たとえ100日天下だとしても

家電エコポイントの点数が12月からほぼ半減することから、駆け込みでテレビなどを購入しようとする人で家電量販店はどこも大変にぎわっています。

2009年5月から始まった家電エコポイント制度の効果で家電量販店の売り上げが伸びる一方、家電メーカーのテレビ事業は過当競争による価格下落が響き、いくら売れても赤字の状態が続いています。

そんな中、今月発売された家庭のお米で手軽にパンを作ることができる「GOPAN(ゴパン)」。
小麦グルテンの代わりに上新粉を使えば「小麦ゼロのパン」も作れることもあり、小麦アレルギーを持つ人(家族)の関心を呼び、デモ機さえ店頭から姿を消した店も多い人気商品になっています。

2003年に開発をスタートした「GOPAN」が実用・販売されるまでに7年。
米からパンが作れる世界で唯一の製品として、今のところどの家電量販店でも同一価格で販売されており、それ以上値引きした店には商品を置かないというメーカー優位の強気の営業を行っています。

作る側より、売る側が力を持ち、その結果、メーカーの収益が悪化し、家電量販店の売り上げだけが増える構図が続く中、「GOPAN」はその悪循環から抜け出し、家電量販店への逆襲さえも感じさせます。

日頃、家電量販店の横暴ぶりに不満を抱いているメーカー関係者の中には、溜飲を下げている人もいるのではないか。
たとえそれが、他のメーカーが似たような商品を発売し、過当競争によって価格の下落がはじまるまでのわずかな期間だとしても。


追記:三洋電機は「GOPAN」の注文受付を12月1日から一時的に停止すると発表。量販店などでの予約件数が想定を大幅に上回るペースで推移しており、生産が追いつかないため。2011年4月頃の受付再開を予定している。(2010年11月25日)
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2010年11月10日

ヒーローラッツ

ネズミが地雷除去に使われているとは、知りませんでした。

「アフリカン・ジャイアント・ポーチド・ラット」と呼ばれるアフリカ原産のネズミ。
犬と同等かそれ以上の優れた嗅覚があり、反復的な作業をいとわないため、地雷に含まれる火薬の匂いを覚えさせ、地雷を特定させる訓練をさせたところ、モザンビークで、約200万u(甲子園球場145個分)の土地の地雷除去に成功。

そのネズミたちは「ヒーローラッツ」と呼ばれ、現在、約300匹が活躍。今年は約100万uで地雷817個、不発弾350個を発見したと言います。しかも事故はゼロ。

ヒーローラッツの特色は、

・低コスト(訓練に要する平均期間は9カ月。約70万円/匹)
・維持及び輸送の費用が安い
・事故がない(軽いので地雷が爆発しない)
・寿命が長い(熱帯地域特有の病気に対して抵抗力があり、平均寿命は6〜8年。訓練の成果を持続できる)
・作業時間が短い(200uの場合:約1.5時間で作業を完了。訓練された2人の作業員が金属探知器を用いて地雷の有無を調査すると約8時間かかる)

そして、なにより

・アフリカにある資源(ネズミ)を使うので、地元の人間によって地雷を解決できる。
つまり、先進国の援助に頼る必要がないということ。
これは、とても大きいことと思います。

日本でもロボットを含む地雷除去のための機器の開発が行われていますが、高価で重いロボットがこのヒーローラッツ以上の成果を上げることが出来るかどうか。

ちなみに、ヒーローラッツは病院から集められた唾液サンプルの上を歩くことで、結核菌を発見することもできるようで、既にタンザニアの5つの病院で結核判定の二次検査に用いられています。
優秀な研究員が顕微鏡を用いて40人分の唾液を検査して、結果が出るまで丸1日かかるところ、ヒーローラッツなら7分で調査でき、しかも、
医師が見落とした結核菌の含まれる唾液サンプルを毎週10〜15件も見つけるそうです。

鋭い嗅覚で人間の癌を見つけるという「ガン探知犬」がいますが、ヒーローラッツが「ガン探知」できる日も近いかもしれませんね。

参考:スーパーモーニング(テレビ朝日) 2010年11月10日
APOPOとヒーローラッツ

陸・海・空 ロボット (2006.7.11)
慶びの地と哀しみの地 (2006.9.6)
忘れられた人々、忘れた人々。 (2006.9.8)
マツタケ、又はトリュフも可 (2006.9.20)
タンチ ミツバチ (2006.12.5)
ワーキング犬に負けないロボット (2007.4.18)
恥を知れ、アメリカ (2008.7.14)
慶びの表現とアフリカの水 (2010.6.13)

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2010年09月22日

B級グルメに踊る

アジア太平洋経済協力会議(APEC)の日本での開催に乗じた地域おこしイベントが、横浜岐阜など各開催都市で行われます。

そんな中、B級グルメの全国大会「B-1グランプリ」が開催され、過去最多の来場者数ということもあり、ニュースやワイドショーでも大きく取り上げられていました。

B-1グランプリの人気投票で上位にランクされれば知名度が上がり、食によるまちおこしにつながるとして、新しい郷土の味に取り組む地域が増えているといいます。

イベントの仕掛けとしては面白いし、実際、B級ご当地グルメを求めて客が大勢集まり、経済効果が出ている地方都市も多いようです。

お金はないけれど、わが町、わが商店街に一人でも多くの人に来てもらいたいと思っているほぼすべての市町村にとって、B級ご当地グルメは格好のまちおこしイベントとして、しばらくはブームが続くのでしょう。

ただ、この種の催し物は回を重ねるほど、食より銭勘定が先になり、話題作り、宣伝先行の珍奇で、過激な食べ物を指向しがち。

特段、B級グルメに関心のない身には、料理を作る人や参加する人が楽しければケチをつける筋合いのものではありませんが、
B級グルメで知名度が向上したことにより、却ってそこに住む人たちの鼻白む事態にならなければいいのですが。

とはいえ、国際会議さえ地域おこしイベントにしてしまうお国柄。
もう、なんでもありなのかなぁ。


フランス料理が得意なロボット研究者 (2006.9.11)
「ぽろたん」のように (2006.10.8)
ぽろたん防衛軍 (2006.11.12)
千葉県に住む不思議ないきもの (2007.1.18)
「アフリカ」と洞爺湖サミット饅頭 (2007.6.11)
千葉の土産に (2007.11.3)
三つ星ロボット (2007.11.20)
ボジョレーより、カツヌマ (2009.11.8)
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2010年08月16日

水着街着とヒゲと

「夕涼み よくぞ男に 生まれける」は、日本の夏を詠った其角の名句ですが、毎日こうも暑いと裸族のような暮らしをしている方も多いのではないでしょうか。

僕も家では水着(汗を吸い取る素材のもの)で過ごしています。
下着を洗う回数も減るし、最近はビーチやプールにも行かなくなったので水着の再利用にもなります。
そして、その水着を着たまま近場の買いものにも行きます。

秘かに、よくぞ男に 生まれける と思っていたのですが、今年の女性の水着は街着としても着られるものが多く、水着と街着の垣根が限りなく低くなっているようです。

女性がセクシーな水着で街をかっ歩してくれるのは歓迎ですが、男の聖域はいよいよ「ヒゲと立ち小便」くらいになってしまった、ということなのかな。


Ladies そしてまたLadies (2007.3.7)
中性的ダンディズム (2008.5.26)
レディース男子の面目躍如 (2009.7.13)
男の裸体と銀座の活用 (2010.1.18)
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2010年08月13日

モノクロをカラーにしただけで

モノクロ映画の着色化(カラー化)については、作品の文化的価値を無視する行為として、マーチン・スコセッシ監督をはじめ、多くの映画人が反対しており、僕もその通りだと思いますが、記録映像に関してはどうでしょう。

NHK総合で放送された「色つきの悪夢」。

第二次世界大戦を記録した膨大な白黒映像を最新のデジタル技術でカラー化していましたが、番組ではその意図を、
「白黒フィルムでは、あの時代の出来事をどこか遠い昔の、自分たちとは無関係の世界と感じてしまう人も多い。カラー化することで戦争の映像が、今とつながるリアルな出来事として強烈なメッセージとなる」としています。

内容自体は昨年NHK-BSでも放送されたナショナルジオグラフィック社の「カラーで見る第二次世界大戦」に準じたようですが、
戦後65年となる今年、戦争の記憶を若い世代につなげようとする企画モノが目立つ中、この番組でも数名の若手俳優を登場させて、戦争について意見を述べさせていました。

デジタル技術による記録映像のカラー化は、死蔵されていたコンテンツを資産価値あるコンテンツに甦えらせる新たな手法として、今後いろいろな番組(アーカイブも含め)に応用されていくことでしょう。


逆転の発想の遺伝子 (2007.4.10)

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2010年06月13日

慶びの表現とアフリカの水

アフリカの水を飲んだ者は、ふたたびアフリカに帰る。
アフリカの大地はやはり特別な気がします。
なにか根源的などっしりとした、非常にシンプルでピュアな感覚。
以前、ケニアに行ったときにそう思いました。

FIFAワールドカップ南アフリカ大会は、サッカーの試合そのものも楽しみですが、試合中継の合間に映し出される色とりどりに仮装した観戦者を見るのが、とても楽しい。

からだ全体で慶びを表現するそのスタイルは、日本人はもちろんや欧米人が逆さになってもマネできない圧倒的な存在感があり、その突き抜けた感情表現は、非常に力強く、ちまちました細かいことなどふっとばすパワーとエネルギーに満ち溢れています。

多くの日本人が、治安が悪そうだという理由だけで、アフリカへの旅行をあきらめてしまうは、とても残念なことです。
アフリカの水を飲む者が一人でも多くなりますように・・・


Say No to ・・・(2006.7.3)
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2010年05月31日

男と女 X

社民党の福島党首が普天間問題で罷免され、社民党が連立離脱を決めた日、NHK日曜美術館で、画家のフランソワーズ・ジローを取り上げていました。

ピカソが花の女と呼び、10年余りを共に暮らしたジローは、ピカソとの間に2人の子供もでき、幸せな生活をおくりましたが、やがて、互いに反目するようになり、子供を連れて家を出ていきます。
数多くの恋人の中でピカソから唯一去って行ったことから、「ピカソを捨てた女」と言われています。

ジローと過ごした10年余りのピカソの絵は、幸福に満ち溢れ、幸せな雰囲気の作品が多いのですが、芸術的な視点でいえば、ピカソの停滞期ともいわれています。

ジローに去られたピカソは、再び旺盛に意欲的な作品を描きだします。
その根底にジローへの愛憎があったのかもしれませんし、女性にインスパイアされることで数々の傑作を作りだしてきたピカソの真骨頂ともいえます。

家を出ていくジローにピカソは言います。
「どんな女だって、わしのような男から去ってゆきはしない。ここを出ることは、砂漠に行くようなものだ」
ジローは答えます。「砂漠で生きる運命にあるなら、そこで生き抜いてみせます」

番組では、88歳で現役の画家であるジローへのインタビューが紹介されていましたが、その凛とした気品あふれる美しさに感動しました。

ここぞというときに放たれる女の強い意志に、たじろぐのはいつも男。


男と女 W (2010.1.14)

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2010年05月16日

蟻は二番目の足から歩きだすんです

画家の熊谷守一は、若いころ、子供が次々にできてなにかと金が入用の時に、妻から何べんも「絵をかいてください。作品さえできればなんとか金に代えられる」といわれても、ヤル気がまったくおこらず、一年間、一度も絵筆を握らなかったことがありました。

また、振動数の計算に夢中になり、毎晩毎晩夜ふけまで、計算にせいを出していたので、妻からは「そんな難しい計算ばかりして、生活の計算はいっこうしない」と言われていました。

そして晩年、熊谷守一は庭にムシロをひいてゴロリと横になり、蟻の歩きかたを幾年も見て、言いました。
「蟻は二番目の足から歩きだすんです」

参考 へたも絵のうち (熊谷守一著、平凡社)


おおらかにいきましょう (2010.3.13)
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2010年05月12日

マスカケ×4

ある飲み会でのこと。
手相の話になり、そこに居合わせた4人全員が、マスカケだったことが判明。

マスカケとは、知能線と感情線が一緒になって、手のひらを一直線に横切っている線のことで、百握りと呼ばれ、徳川家康がマスカケであったことから、強い運命を持った幸運な相、物質運に恵まれ、強力な個性の持ち主と言われています。

実際、歴史上の人物や有名人にマスカケの人は多いらしく、秀吉、信長、キュリー夫人にはじまり、小泉純一郎、田中角栄、アントニオ猪木から桑田圭祐まで、多士済々です。

しかし、飲み会の4人が全員マスカケだったのは、強い運命を持った幸運な人たちだからではなく、マスカケがめったに居ない非常に珍しい相だと本人が勝手に思っていたことからくる単なる「思い込み」のような気がします。

とはいえ、他の占い同様、信じる者は救われる?


血液型と幸福度 (2008.7.18)
フィンランド人もウクライナ人もネパール人も (2008.7.21)

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2010年03月26日

「現場の声」に尾ひれがついて

地方に行くと、「東京に居ると芸能人をよく見かけるんでしょ」といわれることがあります。

確かに、飲食店や街中で芸能人を見かけることはありますが、だからといってなんとも思わない東京人は多いと思いますが、地方の、特に若い人にとっては、東京 = 大都会 = 華やか = 芸能人 という図式が成り立っているのかもしれません。

春休み、地方から遊びに来ている若い人たちも多い中で起こった原宿・竹下通りのデマ騒動。

「原宿なら芸能人が居てもおかしくない」という潜在的な思いこみに群衆心理が働き、それにケータイやメール、ツイッターによる「現場の声」に尾ひれがついて、パニック状態になったのかもしれません。

騒動に巻き込まれ、怪我をされた方は大変お気の毒でしたが、この騒動、今後、群衆心理やネット社会を論じる際に参考事例として繰り返し取り上げられそうです。
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2010年03月19日

非実在青少年と初音ミク

東京都が児童ポルノの規制のために今議会に提出した「青少年健全育成条例改正案」について、表現規制につながるとして漫画家や出版関係者から抗議の声が挙がっています。

その改正案によると、「18歳未満として表現されていると認識できるキャラクター」を「非実在青少年」と言うそうですが、この言葉を聞いてパッと思い浮かべたのが、歌声合成ソフト(ボーカロイド)のバーチャルキャラクター「初音ミク」。

「初音ミク」については、昨年のSEATEC JAPANで歌を披露した「HRP-4C 未夢(ミーム)」にも音声ソフトとして搭載され、その完成度の高さに感心しましたが、アニメやゲームに詳しい知人から聞いて見た「ミクフェス」の映像には、衝撃を受けました。

「初音ミク」に詳しい方からはなにを今さらといわれるかもしれませんが、生バンドをバックにCGのミクが透明なスクリーンで踊りまくり、その姿に2000人を超える観衆がケミカルライトとネギ型風船で熱狂する様は、3D映画「アバター」よりも、ずっと刺激的です。

さまざまな人が「初音ミク」のために作ったオリジナル演奏曲は、どれも「初音ミク」のキャラクターを大切にしながらも、かなり過激な歌詞の曲もあり、カウンターカルチャー的な雑多な面白さがあります。

初音ミク」というバーチャルなアイドルをユーザー自らが作り、皆で共に育てているというある種の一体感は「初音ミク」の面白いところだと思いますが、バーチャルな世界がリアルな世界と融合するライブステージは、今後の世界のエンターテインメントに大きな影響を与える可能性があると感じました。

それにしても「非実在青少年」。
実にバーチャルな、中々癖になりそうなネーミングですね。


高齢者のネーミング (2008.4.3)
平成カウンターカルチャー (2010.1.10)
エポックメーキングな映画 (2009.12.27)
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2010年03月13日

おおらかにいきましょう

東京都では、3月と9月を自殺対策強化月間と定め、自殺防止を呼びかけるキャンペーンを行っていますが、いかにもアメリカかららしいおおらかなニュースを ・・・

米アカデミー賞の主演女優賞を受賞したサンドラ・ブロックは、その前夜、ゴールデン・ラズベリー賞の最低女優賞を受賞した授賞式に出席して、
「作品を見て、本当に最低かどうか判断すると約束するなら来年もここに来るわよ。最低じゃないなら賞はお返しするわ」。
(AFP=時事 2010年3月6日)

アメリカのギブズ大統領報道官は、バンクーバー五輪アイスホッケー男子決勝をめぐり、カナダ首相報道官と負けた方が相手チームのユニホームを着て記者会見に臨む賭けをして、カナダ代表のユニホーム姿で登場。
「彼(カナダの報道官)は数百マイル北のどこかで笑っているだろう」。 
(時事通信 2010年3月13日)

クエンティン・タランティーノ監督は、若い頃から通っていたロサンゼルスの名画座(ニュー・ビバリー・シネマ)が経営難に陥ったことを知り、経営者一家に救いの手を差し伸べるために同館を買い上げたが、そのことが明らかになって、
「俺の命と金があるかぎり、ニュー・ビバリーは35ミリフィルムの2本立て上映館として存続する」。
(eiga.com 2010年2月22日)


真夏の夜の開通で垣間見えたこと (2009.8.16)
IKEA それでも、おおらかに (2006.5.2)
イタコイズ・ヒーリング (2006.8.2)
こびとのいる街 (2006.8.29)
ダイジョウブ・ロボ (2006.9.27)
血液型と幸福度 (2008.7.18)
実にモッタイナイ話 (2008.9.15)
幸せの尺度 (2008.10.9)
実用的ではないけど、居るだけで心が癒されるロボット (2009.1.8)
3人わかってくれる人がいたら大丈夫 (2009.9.14)
ホッとする存在としてのロボット (2010.2.7)
アザラシ・ファンタジー (2010.2.11)
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2010年01月18日

男の裸体と銀座の活用

上半身裸の男性モデルが出迎えるインパクトある1階入り口からはじまり、エロティックな壁画が描かれた薄暗い店内は、フレグランスの濃厚な香りが漂い、ガンガンに流れるクラブ音楽に乗ってストア・モデルが腰をクネらせる。

銀座6丁目、中央通りに昨年末にオープンしたカジュアルラグジュアリーファッションブランド「アバクロンビー&フィッチ」(アバクロ)。

ユニクロやGAP、H&M、ZARAなどのファストファッションとはあきらかに異なる「五感」を刺激するというコンセプトは、確かに面白いですし、ひさしぶりにバブルの頃の感触が蘇りました。

逆にいえば、「過去」を追体験しているような感覚で、そこには「今」をあまり感じません。

デフレが進み、低価格で質のよい商品しか生き残れない「今」の日本で、いくら美男美女のストアモデルに「What's going on?」とあいさつされても、アメリカ店の2倍近い商品価格設定が日本の消費者、特に20代の若者の支持を得られるかは疑問です。

そんな「今」の日本に、「アバクロ」はなぜアジアの第1号旗艦店を出したのか。
その向かっている先は明らかに中国市場。
「アナクロ」とさえ思える1号店を銀座に出店したのも、銀座にショッピングに来る中国人観光客向けのパイロットショップという位置づけであるような気さえします。

「アバクロ」は会社のポリシーとして取材を一切断っているそうですが、鍛え抜かれた上半身裸の男との記念撮影サービスは、それだけで十分話題性があり、口コミ効果も高いはず。
女性だけでなく、男性観光客も楽しそうに写真に収まっていました。

今後も中国市場を意識した「銀座」の活用が増えていく、のかな。


Ladies そしてまたLadies (2007.3.7)
グラマラス × ロボット (2007.2.7)

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2010年01月14日

男と女 W

ルイ・マル監督の映画「ダメージ」。

愛する妻と幸せな家庭があり、大臣の椅子さえ約束された大物国会議員が、突然現れた息子の恋人(ファムファタールな女)と恋仲となり、情事を重ねた末に、家庭も地位も、最愛の息子までも失ってしまう ---

北アイルランド自治政府首相の妻が、39歳年下の青年と不倫していたというスキャンダル。

妻が青年に援助していた事業資金5万ポンド(約740万円)を申告せず、首相も報告を怠った責任を議会で追及されたこともあり、自治議会議員である妻は議員を辞職し、首相は「父として夫として、家族の問題に対処するために時間をあてる必要がある」として一時的(6週間)に首相職から離れることになったようです。

映画のラストシーン。
すべてを失い砂漠の地で一人さびしい姿をさらす男は、事件の後一度だけ、あの女を見かけます。
しかし、そこに居たのはごく普通の「女」でした。

不倫の事実を認めた首相の妻は自殺を図ろうとさえしたようですが、青年との関係は昨秋には終わっていたという報道もあり、首相の妻にとってその青年が身を滅ぼすほどの「運命の男」であったのかどうか。

参考:2010年1月12日 ロイター


男と女 (2007.2.2)
男と女 U (2007.2.11)
男と女 V (2007.2.14)
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2010年01月10日

平成カウンターカルチャー

授業中にモスキート音(※)で作った楽曲を着信音にしてメールを受信していた女子高校生がいたというニュース。

大人には聞こえない高周波の「モスキート音」は、若者の迷惑行為を防ぐ目的で昨年足立区が公園に導入して話題になりましたが、大人には聞こえないことを逆手に取り、着信音をケータイに使う高校生が増えているらしい。

当然、教師にはその着信音は聞こえない。

久しぶりに、「カウンターカルチャー」という言葉を思い出させてくれました。

そのうち、「モスキート音」を使って、若者だけが動かせるロボットも登場するようになるかもしれませんね。

明日は全員が平成生まれのはじめての成人式。
僕の長女も大人の仲間入り。

今の大人社会にオモネルことなく、自らの力で新たな時代を切り開いておくれ。


参考 2010年1月6日 日経新聞

※モスキート音
店頭にたむろする若者を撃退するためにイギリスで開発された高周波の音。10代の子供にはブーンという不快音に聞こえるが、20代後半から聞こえなくなる。
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2009年12月07日

江戸の婚活

映画「七人の侍」は当初、ある一人の侍の一日の出来事をリアルに描写しようと始まったが、侍がどのように一日を過ごしたのかいくら調べてもわからなかったため、別の物語を考えたことから誕生したというのは、有名な話。

ほとんど知る由もなかった侍の日常生活を完璧に記録した「金沢藩士猪山家文書」が歴史学者によって見出されたのが2001年。
そして、その文書の全容は2003年に「武士の家計簿」(磯田道史著)として出版されました。

「金沢藩士猪山家文書」は、加賀藩の御算用者(会計処理)であった猪山家三代37年間の幕末から明治に至る家計簿、書簡、日記などからなり、江戸時代の武士が家の格式を保つための「身分費用」や親族付き合い(冠婚葬祭)に大変な出費を強いられていたこと、武士の領主権は現実の土地から切り離されて弱かったこと、幕末から明治にかけては軍事調練などの兵站事務の重要性が増し、計算能力に長けた御算用者が重用されたことなどが明らかになりました。

「猪山家文書」には結婚に関する記述もあります。

江戸時代の結婚は婚姻届の提出を境に未婚と既婚がはっきり区別されていたわけではなく、未婚でも既婚でもないグレーゾーンの「結婚しつつある状態」、いわば「お試し期間」がありました。

実際、猪山家でも婚約が熟すよう、女性が少しずつ男性の実家を訪れ、半月ほど宿泊したりするなど、家同士で積極的な「婚活」が行われました。

また、家格が同程度であり、相手の家の事情があらかじめわかることなどの理由から、「いとこ婚」がポピュラーな結婚様式だったようです。

確かに、僕の親の世代くらいまでは兄弟も多く、父方、母方を合わせると「いとこ」が数十人はおり、それゆえ、自由恋愛が難しかった江戸時代には「いとこ婚」も普通のことだったのでしょう。

しかし、出生率が1.37(2008年)となり、20〜30歳代の6割が子供を必要と思わない(※)現状では、一人の「いとこ」さえ居ないケースもあり、平成の「いとこ婚」は限りなくありえない時代となってしまいました。

「武士の家計簿」は森田芳光監督により映画化され、来年公開予定。

※ 男女共同参画に関する世論調査 (12/5 内閣府)

参考:「武士の家計簿」(磯田道史著/新潮社)
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2009年11月08日

ボジョレーより、カツヌマ

ワイン好きに誘われて、山梨県勝沼のワイナリー(醸造所)巡りをしました。

その日は、「ワインツーリズム」が行われ、都心のスーパーに卸している大手メーカーから、地元でしか販売していない家族経営の醸造所まで、甲州市30のワイナリーが参加。
ぶどう畑を見ながら、ほろ酔い気分で新酒のテイスティング(試飲)をすることができました。

「ワインツーリズム」の醍醐味は、いくつものワイナリーでテイスティングすることで、自分好みのワインを見つけ出せること。

同じ甲州種を使ったワインでもワイナリーによって驚くほど味に違いがあることがわかります。
また、ワイナリーに直接赴くことで、そのワイナリーのワイン作りにかける気持ちや愛情を感じることができます。

創業100年を超えるあるワイナリーでは、社長自らぶどうの種類やワイン作りの楽しさを語り、新酒の「地ざけ」や「一升瓶のワイン」など、さまざまな自家製ワインをふるまってくれて、すっかり飲み会状態に。

いろいろな新酒をテイスティングし、自分の好みのワインを地元で購入するというのは、とても健全な気がします。

それは、ワインに限らず、日本酒や焼酎でも(酔っ払ってツーリズムになるかどうかは別にしても)同じで、地元でとれたものを地元で味わうというのがやはり一番なのだとあらためて感じました。

11月の第三木曜日午前0時に解禁されるボジョレー・ヌーボー。
その年のブドウの出来具合を確認するテスト酒を短期間でワインにしたボジョレー産の新酒を、フランスから空輸してまでありがたくいただくなどという風習は、もう止めにしませんか。

三つ星ロボット (2007.11.20)
千葉の土産に (2007.11.03)

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2009年09月14日

3人わかってくれる人がいたら大丈夫

イチローが9年連続で200本安打を達成した夜、希望学の研究から見えてきた「希望」再生についての番組※1が放送されました。

東京大学社会科学研究所の希望学プロジェクトが行ったアンケートによると36.2%の人が「希望がない」と答えたそうです。

希望とは、変革の原動力。

しかし、先がまったく見えない場合も、また、先が見えてしまった場合にも、希望は感じられないといいます。

希望には物語が必要で、物語とは人生における紆余曲折のことであり、効率が重視されるばかりの今の世の中では、一人ひとりが物語を持ちにくくなっている。

では、どうすれば希望を取り戻せるのか。

希望学のプロジェクトでは、かつて「製鉄の街」として栄えた岩手県釜石市を日本の未来像と位置づけ、現地調査を行いました。
そして、その結果から見えてくる「希望」再生のヒントとは、

・ローカルアイデンティティの再構築
・Uターン組が風を起こす
・ウィークタイズ※2の重要性 

番組では、地域振興のために自力で遊園地を運営するも、失敗。多額の借金をなんとか返済し、ふたたび水ビジネスを起して地域を活性化している一人の男性を紹介していました。

その方の言葉が印象的です。
「3人わかってくれる人がいたら大丈夫」


※1 NHK 「クローズアップ現代」 (9.14)
※2 ゆるく結んだネクタイのように、たまにしか会わないくらいの友人や知り合いとのゆるやかなつながりのこと。自分が日頃気づかない長所を見つけたり、思いがけない可能性に気づかせてくれたりする。その反対が「ストロングタイズ」。強い結びつきの人間関係を指し、同じ職場や同じ学校のように強い結びつきの付き合いの事。同じ価値観や同じ目的意識の集団のため、自分の新しい価値観の醸成や、思いがけない自分の可能性、新しい世界の発見には繋がりにくい。


ダイジョウブ・ロボ (2006.9.27)

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