2011年10月27日

ウルトラプリニー

(つづき)
先日、新燃岳の噴火活動について鹿児島大学の井村隆介准教授は、「地下のマグマだまりへのマグマの供給が続いており、あと2か月ほどで今年1月と同規模の噴火が起きた状態になる可能性がある」と発表しました。

小説「死都日本」(石黒耀著)では、加久藤火山という霧島火山の地下に隠された巨大火山が破局噴火を起こし、噴火に伴う大規模火砕流、火砕サージ、ラハール、降灰、土石流が発生。たった一日で宮崎、鹿児島など南九州が壊滅します。
そして、本州全域の半分以上も火山灰と雨による土石流で経済活動が不能となり、首都機能も完全に麻痺。世界規模の気象異常が引き起こされます。

東日本大震災による地殻変動の影響からか、南九州全域の火山をはじめ、富士山、草津白根山、大島三原山などの多くの火山が活動期に入ったと報告されています。

井村准教授によると、1月26、27日の新燃岳の噴火による火山灰などの噴出量は、桜島の昨年1年間の爆発的噴火(計896回)の10倍だったとのこと。

巨大火山の破局噴火、学術用語では「ウルトラプリニー式噴火」は、日本では7000年〜1万年に1回程度の頻度で起きており、直近では7300年前に鹿児島県南方沖の海底火山(鬼界カルデラ)で起きた破局噴火で噴出した火砕流が50km以上も海面を流走して、南九州で栄えていた縄文文化を壊滅させたといいます。

巨大火山の破局噴火は、まったく想像を絶します。


参考: 読売新聞(2011.10.7)
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2010年11月26日

「冒険」という響き

先日行われた、四半世紀後の海中工学を問う講演会

海洋工学に関連する若手研究者(海洋生物、水中音響、海底資源開発など)が、それぞれの分野の現状とこれからの四半世紀の海中工学について発表しました。

発表時間が限られていたこともあってか、海底資源の定量的な情報取得、それを実現するための海底プラットホームやネットワークの構築など、浦先生の迫力ある過去25年を聞いた後では、未来の話とは思えないようなあまりにも現実的な話が多く、ちょっとがっかりしました。

宇宙と同様海洋も様々なことが現実化してしまった現代においては、夢よりも実現可能性を、また、尖閣諸島問題に代表される海底資源の調査・開発の優先度が上がっていることも影響しているのかもしれません。

そこで思い出したのが、フランスの建築家ジャック・ルジュリが発表している海洋軌道船「シーオービタ」。

ジョイスティックのような形をした高さ51メートルのこの「海の宇宙ステーション」は、海上部分で気象や海水、気温の変化などの調査を、水面下で海洋生物の蒐集などを行なう研究観測施設(乗組員16名)。海を漂い、二年かけて地球を一周します。

「シーオービター」の紹介ビデオが、またいい。
未知なる世界を目指す「冒険」という響きを感じさせる、心踊るもの。
さすが、ジュール・ヴェルヌやジャック=イヴ・クストー、ジャック・マイヨール、そして、映画「グラン・ブルー」を生んだお国柄です。

インタビュー 浦 環氏

その「リアル感」が若者をして実現可能な範囲での発想を余議なくさせている (2010.4.5)
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2010年11月17日

なぜこの日なのか

「偶然に」とか、「たまたま」ということは確かに、あります。
また、「緊急を要する」ということも、あるでしょう。
しかし、公の機関が正式な記者発表をする場合、十分検討・計画の上、もっとも効果的なタイミングになるよう行うのが普通です。

昨日の小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワの微粒子の採取に成功したとする宇宙航空研究開発機構(JAXA)の記者発表。

世界初の偉業が、なぜこの日に発表されたのか。

それは、「元気な日本復活特別枠」の予算獲得や明日18日の事業仕分け (宇宙開発事業)を意識したことは、明白です。
「はやぶさ」の世界初の成果を最大限利用してのなりふり構わぬそのやり方には、あざとささえ感じます。

数々の苦難を乗り越え、月と彗星以外の物質を世界で初めて持ち帰った「はやぶさ」。
プロジェクトに関わった関係者の熱意と努力は、どんなに称賛しても足りないほど素晴らしいことだけに、とても残念な気持ちです。


はやぶさの帰還の重み(2010.6.14)
バブルの扇子は宇宙で花開く(2006.12.17)
品行方正な夢のなさ(2009.3.10)
いただいたご意見につきましては、今後の検討の参考とさせていただきます(2009.5. 31)
構想27年、稼動5年、制作費7800億円 (2009.7.20)
日本の文化としての二足歩行ロボット (2009.7.23)
史上最大級のロボット (2009.9.8)
定時運行、当たり前の難しさ (2009.9.11)
"高性能化と低コスト化" 宇宙に関わる人々の言葉(2) (2009.10.13)
その「リアル感」が若者をして実現可能な範囲での発想を余議なくさせている (2010.4.5)
文化をからめた宇宙滞在紹介の限界 (2010.4.14)
誰だって月より火星に行ってみたい (2010.4.17)
GO! イカロス!! (2010.5.17)
省庁発 危機を煽る季節 (2010.10.6)
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2010年06月14日

はやぶさの帰還の重み

はやぶさが戻ってくる映像をLive(実際は数分遅れ)で見ました。

はやぶさの最後の光が雲間に明るく輝く姿に素直に感動しました。
中継した和歌山大学のユーストリーム番組内には、本当に多くの人の「はやぶさ、おかえり、ありがとう」のコメントが次々とアップされていました。

世界初の小惑星探査にチャレンジし、数々の苦難を乗り越え、国民に勇気と感動を与えた「はやぶさ」の開発と運営チームに、政府は間髪をいれずに国民栄誉賞を贈るべきでしょう。

サッカーのワールドカップ開催中ということもあり、はやぶさ帰還の様子はNHKをはじめライブ映像として流す局はなく、このユーストリームによるLive配信は、新たなメディアとしてのユーストリームを大きく印象づけるエポックメーキングな配信だったと思います。

それにしても、このはやぶさの帰還を速報しないテレビ局の感覚の鈍さは、どうしたものだろう。


参考 : ロボティック・ミッション (「はやぶさ」の項参照)
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2010年05月17日

GO! イカロス!!

18日に打ち上げられる「HUA」17号機には、日本初の金星探査機「あかつき」、世界初の宇宙ヨット「IKAROS(イカロス)」、そして4基の小型副衛星が搭載されています。

そのどれもが素晴らしいチャレンジですが、なかでも「小型ソーラー電力セイル実証機」と名付けられた「イカロス」の技術実証実験は要注目です。

実験は大きく分けて2つ。
ひとつは、薄膜太陽電池が張られた一辺14mのセイルを広げ、宇宙空間で発電することを確認すること。
展開されたセイルの全体像は本体に搭載されたカメラを宇宙空間に放出して撮影します。

もうひとつは、セイルが太陽光だけで加速・減速し、方向転換や軌道制御できることを確認すること。
併せて、本体のスラスタ噴射や薄膜に張られた液晶デバイスによる姿勢制御も行われます。

その他、イカロスから電波を放出して、複数の地上局で受信することで高精度な軌道を決定するVLBI(※)実験や、搭載されたダストカウンターによる軌道上のダスト分布推定実験など、理学や工学の多くのオプション実験を行う予定で、この機会にやれることはすべてやってしまおうという研究者の旺盛な意欲が伝わってきます。

今回の実証実験の成果を基に、将来的には高性能のイオンエンジンを組み合わせて、木星への長距離航行を目指すということです。


(※)VLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉法)
はるか彼方にある電波星(準星)から放射される電波を複数のアンテナで同時に受信して、その到達時刻の差を精密に計測する技術。

<追記>18日の打ち上げは天候不順により、21日に延期された。
<追記>JAXAはイカロスが予定していたミッションすべてに成功したと発表。(2010年12月10日)
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2010年05月09日

火星で一番美しい場所

昨日の「世界ふしぎ発見!」(TBS)では、アメリカのグランドサークルを取り上げていました。
そして、その中でももっとも美しい絶景ポイント「The Wave」を紹介。

The Waveは、どこか他の惑星を観ているような、有無を言わせぬ圧倒的な自然の造形美に満ち溢れ、番組キャッチコピーの「地上で一番美しい場所」に偽りはなし。

映画「アバター」で自ら3Dカメラシステムを開発したジェームズ・キャメロン監督は、一般からの興味を高めるとしてNASAの次世代火星探査車に新たな3Dカメラを設置するよう働きかけた(※)ようですが、われわれの想像をきっと遥かに超えるだろう火星の美しい自然景観を早く見てみたいと思いました。

※AFP時事 (2010.4.29)


誰だって月より火星に行ってみたい (2010.4.17)
エポックメーキングな映画 (2009.12.27)
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2010年04月17日

誰だって月より火星に行ってみたい

(4/14のつづき)
前原国土交通相(宇宙開発担当)の私的懇談会が「宇宙庁」の新たな設置を提言した2日後、オバマ米大統領は 2030年代半ばに火星に人を送ることを発表しました。

国際宇宙ステーション計画以降、国際協調路線に転じたアメリカの顔を伺い伺い宇宙政策を決めていた日本は、ブッシュ政権が掲げた「アメリカはもう一度月を目指す」に従い、じゃぁ日本も月探査に舵を切ろうとした矢先のアメリカ一国至上主義的方針転換に日本の関係者もあわてたのではないでしょうか。

火星を目指すというオバマ大統領の発言には、月探査計画の中止を決定したことで、ロケット発射台があるフロリダ州などで雇用不安が広がったことに対する政治的意味合いがたぶんにあるようですが、大統領が火星往きを高らかに宣言することで国の宇宙政策の方向性がきっちりと決まった意味合いは大きいと感じます。

もちろん、月より約200倍も遠い火星を往復するのには2年近くかかることを考えれば、火星に人類が行くことが相当な困難を伴うことは誰が考えても明白でしょう。

しかし、市民ランナーが町の10kmマラソンに200回出場したとしてもオリンピック選手になれるとは想像できないように、また、商店街の活性化イベントとFIFAワールドカップ開催とが、手間がかかることでは同じでも、波及する影響力がケタ違いであるように、月を目指すことと、火星を目指すことでは、根源的に大きな相違がある気がします。

先日の「月探査ナショナルミーティング」で、前国立天文台長の海部宣男氏は、
「何故、宇宙探査をするのか。それは、宇宙という場を借りて、人類が地球でより良く生きるため。また、宇宙探査は探検と科学である。月で技術や人材を育て、高めた上で生命の可能性のある火星を目指すべきだ。地球とは違う環境で育った生命が発見されれば、地球の生物を考えるきっかけになる。火星でなにができるのか、国民全体として考えるべきである」と述べていましたが、まったく同感です。

宇宙探査の目的は、
「われわれはどこから来たのか、われわれとはなにか、われわれはどこへ行こうとしているのか」、そんな人類究極の知らないことを知ることに尽きます。

そしてまた、月と火星を比べれば、誰だって月より火星に行ってみたいと思うでしょ。


文化をからめた宇宙滞在紹介の限界 (2010.4.14)
その「リアル感」が若者をして実現可能な範囲での発想を余議なくさせている  (2010.4.5)
想像できない! (2010.1.5)
地球の自然以上に宇宙が魅力的であることの証明 (2007.6.13)
PALE BLUE DOT  (2006.11.10)
黒いヴェルベットのスクリーン (2006.10.20)
978日×3宇宙食 (2006.9.17)
結局のところ、最後は星か、無。 (2006.9.13)
火星へ (2006.9.12)
壮大だけど、実に人間臭い話 (2006.8.23)
知・リターンズ (2006.3.25)
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2010年04月14日

文化をからめた宇宙滞在紹介の限界

(4/5のつづき)
国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の山崎直子さんは、日本人女性2人目の宇宙飛行士ということもあってか、献身的な夫や娘に支えられた良き妻、良き母としての姿がクローズアップされると共に、
ISSに持ち込める化粧品の種類とか、着心地の良い船内服とか、女性ならではのワイドショー的視点での紹介が多い気がします。

実際は分単位のハードな仕事をこなしているはずですが、それらは当然専門的なことなので、情報を提供するJAXAも国民、特に若者や女性が興味を持てる、わかりやすく親しみやすいイベントの紹介に注力しているのかもしれません。

琴と横笛で「さくらさくら」を演奏したり、首相官邸で俳句を詠んでみたり ・・・・

先日開催された「月探査ナショナルミーティング」でも、「文化をからめた宇宙滞在の紹介は日本らしい」という意見も出たくらいなので、それはそれで意義のあることなのでしょう。

しかし「文化」はとかく「日本的情緒」に代表される、非常にあいまいで感覚的なもの。

いくら「文化」が大切だとわかっていても、それでは年間400億円もの税金を使ってISSを維持、使用していることを国民が納得できるだけの「説得力」を感じません。

「月探査ナショナルミーティング」にゲストとして出演した若田光一宇宙飛行士は、
『日本がISS計画に参加したことで、宇宙開発での日本の存在感が増し、特に実験棟「きぼう」や運搬船「HTV」の成功は、諸外国から大変尊敬されている。自前の技術を持つことは大変重要』であるとし、
宇宙開発では、基本的に宇宙船を持っている国の言語を使うことから、『スペースシャトルでは英語、ソューズではロシア語、中国の宇宙船では中国語を喋る必要があるが、それでは宇宙に行くための訓練がすべて語学訓練になってしまう』と流暢なロシア語を披露して、日本独自の宇宙船開発の重要性を暗に示唆していました。
(つづく)

飲んだら飛ぶな 宇宙禁酒法 (2007.8.2)
その「リアル感」が若者をして実現可能な範囲での発想を余議なくさせている (2010.4. 5)
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2010年04月05日

その「リアル感」が若者をして実現可能な範囲での発想を余議なくさせている

山崎直子宇宙飛行士が搭乗したスペースシャトル「ディスカバリー号」がケネディ宇宙センターから打ち上げられるおよそ50時間前、有楽町で「月探査ナショナルミーティング」が開催されました。

このミーティングの目的は、「月探査に関する懇談会」での検討状況を踏まえ、日本らしい月探査とは何かについての意見交換を行い、そこで得られた意見を今後の月探査に活かしていくこと。

今回、主催者が特に注力したのが若い人の参加と、積極的な意見。
プログラムの第二部では、事前に選ばれた学生パネリスト5名と、中学生から大学院生までの参加者を交え、発表と討論が行われました。

しかし、肝心の若い人たちの意見は、極めて真っ当で非常に模範的なもの。
大人たちが意図した「若者らしい突飛な発想」は、ほぼ皆無で、進行役は盛んに残念がっていましたが、ゲストや委員からはその意見に同感しつつも、
「自分たちの若い頃は日本人が宇宙飛行士になったり、日本が月探査を目指すことなどは夢物語だったが、今ではそれらが実現し、現実のものになったことで、若い人たちも夢よりも実現可能性のある提案になったのではないか」といった意見も出されていました。

国際宇宙ステーションで男女の日本人宇宙飛行士が活躍する時代。
宇宙開発が夢物語でない今、その「リアル感」が若者をして実現可能な範囲での発想を余議なくさせているのかもしれません。
(つづく)

品行方正な夢のなさ (2009.3.10)
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2010年02月11日

アザラシ・ファンタジー

キタゾウアザラシは回遊中の長い期間、まったく陸地に上がらないばかりか、水面に滞在する時間も短く、そのためいつ休息しているのかこれまで大きな謎だったそうです。

3Dデータロガー※を使った北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの調査によると、アザラシはお腹を上にして落ち葉が落ちるように螺旋を描きながらゆっくりと潜降し、およそ150mの水深で休息していることが分かりました。

深い海の底に向かって、螺旋を描きながらのんびりと沈んでいくアザラシの姿を想像しただけで、なんだか心があたたまる感じがしますね。

北海道大学リリース (2010年2月9日)
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2010年01月05日

想像できない!

映画「アバター」に出てくる惑星パンドラ(地球から4.4光年先)に住む原住民ナヴィ族は、大地のネットワークに接続することで動物たちや先祖などと共鳴しあえる、という設定になっていましたが、そんなパンドラ以上にわれわれの想像を絶する世界が宇宙にはあることをあらためて教えられるニュースが相次いで報じられました。

ひとつは、地球から約40光年離れた赤色矮星(わいせい)の周りを回っている地球の2.7倍の大きさの惑星に大気と氷を発見したというもの。(※1)

惑星「GJ1214b」(どこかのパスワードのような名前!)は、「表面の温度が200度前後で、大半が氷で構成されている」そうです。

イマジン(想像してごらん)  沸騰しているのに、氷で覆われている世界を!

ちなみに、質量が地球と大差ない太陽系外の惑星のことを「スーパー地球」というのだそうです。(まるで近所のスーパーマーケットのような!)

もうひとつは、理論上その存在が予測されているヒッグス粒子が、宇宙を満たす謎のダークマター(暗黒物質)と同じものであるという新理論。(※ 2)

証明されれば「宇宙は5次元以上ある」ことになるのだそうです。

まずは「ヒッグス粒子」。
質量の起源とされ、普段は姿を現さないが他の粒子の動きを妨げることで質量が生まれるとされる未発見の素粒子のこと。

そして、「ダークマター」。
宇宙にある見えない物質のことで、宇宙全体の物質エネルギーの23%を占めるとされています。
《我々が見ている世界はたった4%のバリオン(水素やヘリウムなどの普通元素)でしかなく、73%を占める真空の中にエネルギーがたまって膨張を加速させている物質「ダーク(暗黒)エネルギー」は、その存在すらまだ確認されていない》。

宇宙は、光を出さない安定したダークマターで満ちていて、宇宙を4次元(時間+空間)ではなく、5次元以上と考えた場合、「ヒッグスは崩壊せず、電荷を持たない安定した存在」になることから、ヒッグス粒子=ダークマターとなるのだそうです。

イマジン(想像してごらん)  普段は姿を現さないのに、他の粒子の動きを妨げることで質量となる見えない物質を!

イマジン(想像してごらん)  われわれの目にしている広大な宇宙が、それでも宇宙全体の4%でしかないという現実を!

イマジン(想像してごらん)  5次元「以上」という世界を!


ちなみにダークマターには、熱い(ホット)と冷たい(コールド)があるそうです。

※1 時事通信 2010年1月3日 
※2 読売新聞 2010年1月5日

参考:四次元、五次元の説明

見えてきた!宇宙の謎。生命の謎。脳の謎。2006.3.21 )
エポックメーキングな映画 (2009.12.27)
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2009年09月25日

人の「痒み」がわかる

子供の頃、水疱瘡になり、そのあまりの痒さに、どうもしようもない思いをしたものでした。
「痛い」のも辛いですが、「痒い」のも相当に辛いものです。

生理学研究所が、「痒み」を感じる脳の部位の特定に成功しました。

「痛み」についてはこれまでも脳内メカニズムの研究は進んでいましたが、「痒み」については脳の反応を調べることができませんでした。「痒み」を引き起こす実験方法がなかったからです。
今回、「痒み」を電気的に刺激する方法を開発したことで、「痒み」を感じる脳の部位の特定が可能となりました。

その結果、「痛み」は「痒み」の軽いものではなく、脳内に「痒み」独自の機構が存在することが明らかとなりました。

今後、どの感覚神経によって脳内の「痒み」が引き起こされるのかが解れば、「痒み」だけに反応する脳の部位の活動を抑える飲み薬も開発できそうです。

TVのバラエティ番組で、「痒み」を電気的に刺激する罰ゲームもそのうち登場するかもしれませんね。
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2008年05月21日

フードファディズム

(つづき)
だんだん年をとってくると、楽しみが「食べる」ことになってくる人は多いと思います。
健康に関する「食」の情報は関心の高い事柄でしょう。

曰く「チョコレートやワインに含まれるポリフェノールは健康にいい」、「コーヒーを一日2杯以上飲む人は、飲まない人よりガンになりにくい」・・・

食べ物や栄養が健康や病気に与える影響を過大に評価したり信じたりすることを「フードファディズム」といいますが、食の安全に詳しい松永和紀氏によると、
「多様な食品を過不足なく食べることの重要性を無視する食の情報には、虚偽や誇張、フードファティズムが紛れ込む」恐れがあるといいます。

冷静に考えれば、
「身体に良いといわれる食品も食べすぎはよくないだろうし、身体に悪いとみなされる食品も節度をもって楽しむのは悪いことではない」くらいは、わかりそうなものですが、
「科学的に実証された」などといわれるとついその気になってしまいます。

そこには科学を装った似非科学の危険も付きまといます。

松永氏は著書「メディアバイアス」の中で、似非科学の実例として、
愛や感謝の気持ちが水を美しく変化させるという「水からの伝言」を取り上げています。

そして、氾濫する科学情報を識別する方法として、以下の十か条を挙げています。

・懐疑主義を貫き、多様な情報を収集して自分自身で判断する
・○○を食べればというような単純な情報は排除する
・危険、効くなど極端な情報は、まず警戒する
・その情報は誰を利するか、考える
・体験談、感情的な訴えには冷静に対処する
・発表された「場」に注目する。学術論文なら、信頼性は比較的高い
・問題にされている「量」に注目する
・問題にされている事象が発生する条件、とくに人にあてはまるのか考える
・他のものと比較する目をもつ
・新しい情報に応じて柔軟に考えを変えていく
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2008年05月19日

産学連携必勝パターン

産学連携が各地で盛んに行われていますが、うまくいったという話はあまり聞きません。

そんな中、見事なビジネスモデルがあります。
「頭を鍛える」ソフトの研究開発で有名な東北大学加齢医学研究所の川島研究室。

同研究室では、企業が開発した製品やシステムが、それらを利用する人の脳にどんな影響を与えるか、科学的に評価して、その情報をもとに企業での製品開発を推進する産学連携研究を進めています。

今度はヤマハ発動機とオートバイ乗車が脳の活性化に及ぼす効果について研究を行うようです。

産学連携において「科学的な検証と評価を商品開発に生かす」という手法は他でも例があると思いますが、川島研究室の成功のポイントは、
いまだよくわからない人間の脳の状態をわかりやすい画像(脳機能イメージング)や数値に置き換えることで、「老い」をより豊かに過ごす商品や「子供」のすこやかな成長を支援する商品に説得力をもたせたこと、でしょう。
(つづく)

参考 : イベントレポート 科学技術と社会をつなぐ 
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2008年03月30日

哀しみのレギュラトリーサイエンス

映画「チーム・バチスタの栄光」の公開に合わせたわけではないでしょうが、先日、医学と理工学を融合して先端医療を目指す「先端生命医科学研究教育施設」(TWInsトゥインズ)が、東京女子医科大学と早稲田大学により設立されました。

それを記念したシンポジウムが開かれ、そこで盛んに強調されていたのが、「レギュラトリーサイエンス」という考え方。

レギュラトリーサイエンスとは、基礎科学や応用科学など既存の科学技術体系とは目的や価値観が異なり、科学技術と人間及び社会との調和を目指したもの。

最先端医療が目指す再生医療や細胞治療、遺伝子治療、ゲノム科学をとりいれた臨床研究、新たな感染症対策などでは、最新の科学技術や知識に基づいた予測と適切な評価を行うとともに、社会との調和を図ることが何よりも重要とされています。

しかし、シンポジウムで垣間見えたのは、相変わらずの医者の論理と大学内の狭い世界での足の引っ張り合い ・・・

そこに患者本位の医療の姿は、ありません。

参考 : いいとこどりの国改め (2007.11.26)
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2008年02月03日

すべてのロボット関係者に青いバラを!

サントリーは来年「青いバラ」の販売を開始するようです。

青いバラの誕生は、長年、育種家の夢でした。
しかし、青い色素をもつ原種のバラがない為、純粋に「青い」バラの開発は不可能でした。

その後、バイオテクノロジーの発展により、青いバラの作出を「遺伝子組替え」で行う研究が始まりました。
サントリーは、1995年に「青いカーネーション」の開発に成功して、2004年、遂に青い色素を持ったバラの開発に成功します。

そして先月末、カルタヘナ法※に基づく一種使用規定の承認を農水省や環境省から得たことで、青いバラの販売が可能となりました。

青いバラの花言葉は、これまでは「不可能・有り得ない」。
しかし、今後は「奇跡」「神の祝福」になるようです。

参考記事 : ウィキペディア及び産経新聞(2/1)

※カルタヘナ法 
遺伝子組換えなどのバイオテクノロジーによって作製された生物の使用等を規制するための法律。遺伝子組換え作物の栽培などを規制する「第一種」と、大気、水または土壌中への拡散を防止する「第二種」に分けられる。第一種は事前承認・届出の義務がある。
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2008年01月09日

私はそっとしておいてあげたい

昨年10月、英バンゴー大学の研究チームが、アイスランド沖の大西洋の海底から、400年以上生きた二枚貝を発見しました。

そのニュースを聞いて思い出したのが、テレビ創世記のドラマ「わたしは貝になりたい」。

捕虜虐待の罪で戦犯となり、死刑執行を言い渡された主人公が、家族に宛てて遺書を書きます。

「どうしても生まれ代わらなければならないのなら……いっそ深い海の底の貝にでも……
そうだ、貝がいい。
貝だったら、深い海の底の岩にへばりついているから、何の心配もありません。
兵隊にとられることもない。戦争もない。
房江や、健一のことを心配することもない。
どうしても生まれ代わらなければならないのなら、私は貝になりたい……」

そんな安らかな理想の場所で、人知れず生きてきた二枚貝でしたが、気候変動調査という人間の都合で引き揚げられ、年齢を調べる作業中に死んでしまったということです。

研究者は「高齢化による生体の衰えにどう対処しているのかを調べるモデルにもなるだろう」と述べているので、
今後、二枚貝を使ったさまざまな健康料理や、二枚貝の成分を使った「長寿エキス」入り健康食品が出てくるのかもしれませんが、できることならそっとしてあげたいと思うのです。

参考 : 読売新聞

うな太郎の身体測定 (2006.10.15)
サンマの寿命、資源の確保 (2006.10.17)
エチゼンクラゲスパイラル (2006.10.28)
ハイパースライム (2006.11.9)
メイドインジャパン、原料エチゼンクラゲ (2007.1.29)
マイワシ・ジェノサイドに見る歴史の必然 (2007.3.25)


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2007年11月26日

いいとこどりの国改め

25日にテレビ朝日で放送された「聖徳太子の超改革」。

番組の中で作家の堺屋太一氏は、聖徳太子の一連の改革について
「太子は、一人の人間が同時に複数の宗教を信じていいという、世界に類のない哲学を創り出しました。それによって日本は、世界中から進んだ文化や技術を取り入れる"いいとこどり"の国になったのです」
と述べ、それが日本人の行く末を決めてきたと語りました。

昨日発表された京都大グループによる世界初の「ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)」作製の成功。

受精卵を壊して作る、これまでの「胚(はい)性幹細胞(ES細胞)」ではなく、皮膚細胞から、あらゆる臓器・組織の細胞に変化する「万能細胞」を作ることに成功したという画期的なもの。
ノーベル賞級の超高度な研究にも関わらず、その成果が国民誰にもわかりやすいのが特徴です。

ところが、時を同じくしてアメリカの大学が同様の研究成果を発表し、同時にブッシュ大統領がその研究支援を世界に向かって強烈にアピール。

これには日本政府もぼやぼやしているわけにいかず、ヒトiPS細胞を利用した再生医療実用化研究に5年・70億円、
そしてこの再生医療研究が臨床応用にすぐ結びつくよう安全基準の策定と、日本が主導権を握れるための環境作りの着手など、
「オールジャパン」体制構築を発表しました。

後出しジャンケンで、アメリカにいいとこどりされては、たまりません。

参考 : 読売新聞 (11月23日)
日本の一番のアキレス腱 (2006.3.11)
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2007年11月03日

千葉の土産に

千葉県農業総合研究センターが、従来種の2倍の大きさの落花生の開発に成功。来年から県内の農家で試験栽培されるようです。

柔らかく甘みがあり、大きくて味も勝ることから「おおまさり」と命名されています。
研究に14年間を費やしたそうです。

落花生の名の由来は、花が咲き終わると地下に向かって子房柄が伸びてそれが豆となることから。
南京豆、関東豆、ピーナッツとも呼ばれています。
千葉県は国内産落花生の約7割を生産。小粒で、殻に茶色の斑点があるのが特徴です。

落花生は、ビールのつまみの印象が強いですが、たんぱく質、ビタミンB(タマゴ8個分)が多く含まれ、美容健康食としても注目されています。

「おおまさり」は、昨年開発された日本栗の「ぽろたん」と同じように、外国産、特に安価な中国産を意識した品種改良ということでしょう。
大粒で柔らかいことから、やがてはカレー味や激辛味などのスナック菓子、小腹が空いたときの栄養補助食品などの新しい付加価値をつけて登場するかもしれません。

千葉ロッテの選手が、「おおまさり」をベンチの中でぽりぽり食べていたり、千葉県の土産として千葉マリンスタジアムや幕張メッセで売られる日もきっと近いことでしょう。

参考
「ぽろたん」のように(06.10.8)
サンマの寿命、資源確保(06.10.17)
ぽろたん防衛軍 (06.11.12)
ぽろたんペレルマン冥王星(06.12.23)
メイド・イン・ジャパン 原料エチゼンクラゲ (07.1.29)
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2007年07月18日

科学者・明仁

天皇陛下がリンネ生誕300年を記念してロンドン・リンネ協会で行った基調講演

「リンネと日本の分類学」と題して、17世紀以降の日本における分類学の歴史を前半は江戸時代に日本にやってきたツェンベリー、ケンペル、シーボルトらの功績や杉田玄白、伊藤圭介らの活躍を通して、また後半はご自身の研究テーマ「ハゼ亜目魚類」を中心に語られています。
そして、今後の分子生物学への期待と共に、
「私自身としては、この新しく開かれた分野の理解につとめ、これを十分に視野に入れると共に、リンネの時代から引き継いできた形態への注目と関心からも離れることなく、分類学の分野で形態のもつ重要性は今後どのように位置づけられていくかを考えつつ、研究を続けていきたいと考えています」と締めくくっています。

原文は英語ですが、招待を受けたリンネ協会への感謝と植物からはじまった分類学が日本に伝わり、自身の研究にまで影響を与えたことを簡明で素直な言葉で述べられています。

普段の天皇陛下は、内閣総理大臣の任命から閣議決定された約1000件の書類への捺印・署名をはじめ、約200回の宮殿儀式、100ヶ国以上の外国要人・大使との会見、通算450回以上の全国戦没者追悼式や国民体育大会への出席、被災地視察、通算50ヶ国超の国際親善訪問、そして宮中祭祀、歌会始などの伝統文化の継承など、多忙な公務を行っています。

そんな公務の合間に40年以上に渡りハゼ類の分類の研究を行い、日本魚類学会の会員として28編の論文を同学会誌に発表しています。

1980年、学者としての業績によってしか会員になれない50名限定のリンネ協会外国会員に選ばれ、また1998年には英国王立協会(ロイヤル・ソサエティ)から、科学の進歩に顕著な貢献のあった元首に贈られるチャールズ二世メダルを受賞しています。

そして先日、英国の科学雑誌「ネイチャー」に今回のリンネ協会の基調講演の要約が掲載されました。

アメリカのゴア元副大統領が環境問題で脚光を浴びていますが、長年地道に「ハゼ」の研究をされたきた「科学者・明仁」としての天皇陛下が、世界、特にアジア諸国にもっと知られるようになればすばらしいことだと思います。

参考 : 読売新聞(6.14 / 7.12)

御料ロボット (06.7.24)
posted by カーサ at 13:26| Comment(1) | TrackBack(0) | サイエンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする