先週から今週にかけて大変重要な国際会議が3つ開催されました。
アフリカのほとんどの国が参加し、U2のボノもかけつけた「アフリカ開発会議」(横浜)、
バイオ燃料による穀物価格の上昇など新たな食料問題について話し合った「食糧サミット」(ローマ)、
そして、クラスター爆弾の禁止を初めて採択した「ダブリン会議」。
特にダブリン会議は、最終日にクラスター爆弾の即時全面禁止を全会一致(110ヶ国)で採択した画期的なものでした。
この離れ業をまとめあげたのがノルウェーの外交戦略。
ノルウェーはこれまでもパレスチナ (1993年)やスリランカ(2006年)の和平交渉に積極的に関わっており、
北欧の小国が、地理的に遠く離れ、複雑で込み入った紛争の仲介役を何故買ってでるのか、不思議に思っていたのですが、NHKのクローズアップ現代「ノルウェー“小国”の外交戦略」を見て、わかりました。
先の世界大戦では中立的な立場だったにもかかわらず、戦争に巻き込まれてしまったノルウェーは、ナチスドイツに5年間も占領されてしまいます。
そのため、様々な紛争をなくすことが自国の利益(独立の維持)に適うこと、またグローバル化により遠く離れた国の紛争が回りまわって自国の脅威になることを、身を持って体験します。
それが、「国際貢献はわが国の文化」とさえ言い切る「仲介外交」戦略の原動力となりました。
「仲介外交」の極意は、
@世界のNGOと連携して、国際世論を盛り上げ、合意に消極的な国の国内世論を喚起、活用する。
A大国との2国間外交ではなく、国際世論を巻き込み、多国間外交をする。
B参加国共通の利害を見出し、相手を説得する
このダブリン会議でも、当初条約採択に反対していた英仏独を、巧みな外交戦術で切り崩していきます。
世界のクラスター爆弾の70%を保有する米露中が不参加とはいえ、今回の条約案は、現在使われているクラスター爆弾の99%を完全廃棄するという大変意義ある内容。
もちろん、条約を批准するかどうかは各国にまかされます。
今回受け入れを表明した日本も、侵略された場合の防衛手段として、また米国との軍事協力の関係から、反対する意見が早速防衛省から出されています。
番組では、ノルウェーが小国であるための限界として、合意までは達成できるが、合意を実行するまでには至っていない点を指摘していました。
実際、パレスチナやスリランカの和平交渉も暗礁に乗り上げています。
そこで日本の役割として、
サミットなどを通じて大国に直接働きかけること。平和外交を通じてノルウェーなどの小国と保管しあう関係を築くこと。その重要性を強調していました。
◆クラスター爆弾禁止条約案骨子◆
・「最新型」爆弾の一部を除き使用、開発、製造、保有、移転を禁止する。
・原則8年以内に在庫を廃棄する。
・不発弾を10年以内に処理。爆弾使用国は処理に協力する。
・被害者を支援する。
・非加盟国との軍事協力・作戦に関与できる。
参考 :
イベントレポート 「
対人地雷の探知・除去を目指した試作機の発表展示会」(2006.7.4)
陸・海・空ロボット (2006.7.11)
ロボット兵器の行方 (2006.7.14)
ヒズボラ・ロボット・アタック (2006.7.19)
慶びの地と哀しみの地 (2006.9.6)
忘れられた人々、忘れた人々。 (2006.9.8)
「アフリカ」と洞爺湖サミット饅頭 (2007.6.11)
ロボット市街戦 (2007.8.17)
アーバンとガンダムに見る両用技術戦略の大きすぎる溝 (2007.11.9)