東京国立博物館で開催されている「
ボストン美術館 日本美術の至宝」展。
奈良時代の曼陀羅図から、長谷川等伯、尾形光琳、伊藤若冲などの近世絵画、刀剣や小袖、能装束など、約90点の展示物はどれもがすばらしく、日本にあったならそのほとんどが国宝や重文指定と思わせるものばかりです。
特に、まるで漫画のように物語の面白さで楽しませる「吉備大臣入唐絵巻」、平治の乱をドキュメンタリータッチでスペクタルに展開する「平治物語絵巻 三条殿夜討巻き」、そして曽我蕭白の超ド級襖絵「雲龍図」は、最大の見どころでしょう。
しかし、今回なによりも驚いたのは、展示作品自体の美しさ(保存状態の良さ)。
ここ数年、日本美術の展覧会をみてきましたが、今回ほど美しさが際立った展覧会はありませんでした。
平安や鎌倉時代の仏画も細部までくっきりと見ることができましたし、快慶の「弥勒菩薩立像」なんかは制作当時そのままといってもいいくらい、金箔もほとんど剥げ落ちていません。
また、蕭白の11点の図屏風は、激しくうねる線描がまるで3D画面のように浮かび上がり、目の前に迫ってきます。
照明による見せ方のうまさもあるとおもいますが、なにより、ボストン美術館の美術品保管方法の確かさでしょう。
140年の間にわたり、美術品を最高の状態に保ち続けた美術館の姿勢は、本当にすばらしいと思います。
それは、例えば、日本にある尾形光琳の作品、「燕子花図」や「紅白梅図」(共に国宝)と、今回出展されている「松島図屏風」を比較するとよくわかります。
「松島図屏風」は金地に色鮮やかな岩の緑や白波がくっきりと映え、まるで現代の作家が昨日描いたような鮮やかさですが、作品の質は遥かに上と思える「燕子花図」にこれほどのインパクトは受けません。
植民地時代に欧米に流出したり、略奪された美術品の返還運動が世界各地で起こっていますが、今回の展覧会を見ると、その作品にとって幸せな場所とは果たしてどこなのかと思ってしまいます。