2014年09月14日

NEDOロボット白書2014を読んでみて

7月に発刊された「NEDOロボット白書2014」。

700ページを超える大著で、読破するにはそれなりの時間を要するため、全編をどのくらいの人たちが読んだかはわからないが、まずは読んでみての感想を述べたいと思う。

様々な立場の専門家が執筆したこともあり、ロボットの定義や歴史から、技術要素、事例、取り巻く環境、社会実装するためのプロセス、今後の課題など、それらをまとめるだけで精一杯だったというのが全体を通じての印象である。
(僕も4章17「神奈川県のロボット実証実験」を書いている)

(1)研究開発とビジネス

ロボット(ロボット関連技術含む)の活用分野は非常に幅広い。
宇宙から海洋、介護から農業、災害支援から武器まで、ロボットの現状を語る(軍事を除く)必要から、それらをいっしょくたにするのは(わからなくはないが)、やはり無理がある。
また、編集者、執筆者の大半が大学や研究機関、行政などの方々なので、どうしても国主導のロボット政策や産業支援、教育論、来たる将来はこうあるべしといった総論中心の記述に陥りやすく、ロボットビジネスの現状認識も甘くなりがちである。

(2)産業用ロボット

ロボットが産業用ロボットからスタートし、歴史も実績もあることから、白書では産業用ロボットの記述も多い。それはそれで参考にはなるが、サービスロボットの記述が白書の基本だと思うので、産業用ロボットの項は今後導入普及が予想されるセル生産など、ヒトとの協調(協働)作業によりフォーカスすべきだろう。

(3)分野の偏り

これも編集者や執筆者の影響と思うが、相対的にフィールドロボット(原発、災害、建設など)やネットワークロボット、産業用ロボットなどへの言及が多く、特にフィールドロボット、産業用ロボットはかなり重複している部分が多い。

(4)海外事情

海外主要国の現状なども報告されているが、データや事例も参考になるものが少なく、もっと突っ込んだ記述が必要。特に米国のサービスロボットの状況についてはロボット関係者の関心・注目も高いと思うので、他の国以上に充実した内容にすべきだろう。

(5)バックキャスト

たぶん、この白書の編集者の一番のウリは、現在ある技術から将来を考える(フォアキャスト)のではなく、将来あるべき未来像からそれに必要な技術を描き(バックキャスト)、そのあるべき姿を現実にするために、ロボットをモノづくり主導ではなく、サービス主導で設計する、というところだと思う。
その考え方自体は良いと思うが、環境や社会の大きな変革や人々の心理や意識に影響を与える非常に幅広い事象をとり上げることにもなることから、どこまで深堀することができるか。
NEDOでは今後もこのロボット白書を改定していく意向のようなので、次回改定版に注目したいと思う。
(つづく)
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2013年10月27日

ロボティック・シンポジウム

ここ数年急速に技術が発展し、民生用としても、また軍事用としても世界中で普及しはじめている「無人機」に焦点を当て、国内外の「無人機」の使用状況、安全性、国際法上のルール形成、電波の使用条件などを紹介します。

日本ではじめての無人機をテーマにしたシンポジウムでもあり、また、様々な立場の専門家が一堂に会して、最新の話が聞ける機会でもあるので、お時間あれば是非ご来場ください。

ロボティック・シンポジウム 
ロボット関連技術の境界線 〜発展する無人機の可能性と国際動向〜


主  催:NPO法人ロボティック普及促進センター
共  催:公益財団法人川崎市産業振興財団、一般財団法人機械振興協会技術研究所、
「武器と市民社会」研究会
後  援:かわさき・神奈川ロボットビジネス協議会
企画運営:潟鴻{ットメディア

開催日時:2013年11月8日(金) 14:00-18:30
※開場13:30 
開催場所:東京ビックサイト 会議棟701+702会議室
参加費 :無料 (定員80名)         
申し込み先 : seminasanka@npo-ric.org
件名に「ロボティック・シンポジウム参加希望」と明記し、氏名、所属先、役職、メールアドレスを記載の上、お申し込みください。定員になり次第締切りとなります。

お問い合わせ先:otoiawase@ npo-ric.org

モデレータ:小林賢一((N)ロボティック普及促進センター 理事長)

13:30 開場・受付
13:50 主催者挨拶及び本シンポジウムの狙い 小林賢一 

14:00 <第1部> 無人機の開発と実用化動向 

・実用化無人機(業務用無人機)の紹介  
大津良一(知能技術梶@代表取締役)
・災害監視無人機システムの研究開発と実証実験 
石川和敏(宇宙航空研究開発機構航空本部 運航システム・安全技術研究グループ無人機システム技術セクション セクションリーダ)
・災害対応ロボット向け通信システム等の検討
竹内芳明(総務省総合通信基盤局 電波部電波政策課長)

15:30 休憩 (10分)

15:40 <第2部> 軍事用無人機の研究開発動向 

・防衛省における無人機研究の取組み 
野間俊人(防衛省経理装備局技術計画官) 
・諸外国の軍事用ロボットの概要
岩永正男((一財)防衛技術協会 防衛用ロボット研究部会長) 

16:40 休憩(10分)

16:50 <第3部>軍事用無人機の国際的な制度と規範形成のトレンド 
・イントロダクション:軍事用無人機をめぐる諸問題
福田 毅(国立国会図書館 調査員)
・UNROCA、ワッセナー・アレンジメント、オタワ・オスロ条約からATTへ:近年の国際規範形成の経緯と背景
夏木 碧((特非)オックスファム・ジャパン ポリシー・オフィサー) 
・致死性自律型ロボットの国際法規制に関する新動向
岩本誠吾(京都産業大学法学部 教授) 

17:50 質疑 
18:30 終了               



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2012年10月21日

御礼

ロボティック・ドラマ 第1幕 「Sex Bargain Robot」とスペシャルゲストをお招きしてのロボティック・ライフスタイルR・ティーチイン。無事終了することができました。
3日間を通して、さまざまな立場の方々にご覧いただき、ありがとうございました。

2年半前に横浜で演劇として上演した時は、実機のロボットが人と同じ舞台でどこまで通用するか、といった観点もあり、「ロボット実証実験シアター」と銘打って上演したので、実際のロボットの動きに観客の視点が引きづられ気味でしたが、今回映像化したことで、本来目指していた「ヒトと機械との関係性」や、夫婦間の葛藤がより鮮明になったのではと思っています。

英字幕を付けたので、今後は外国の人の意見なりも聞いてみたいと思いました。


2012年10月16日

男と女deロボット

(つづき)
今週17日(水)から開催される「ロボットイノベーション2012」で上映する、
ロボティック・ドラマ 第1幕 「Sex Bargain Robot」。

上映後に、ロボティック・ライフスタイルレジスタードマーク ・コミュニケーションについて話をするのですが、展示会の出展者、講演者、来場者共に「男」が圧倒的に多いだろうから、せっかくの機会だし、女性との対談というかたちでやってみようと、
最終日19日に、「男と女 de ロボット」と題し、ティーチインすることにしました。

ゲストの3名は、それぞれ第一線で活躍している※作家、ファッションディレクター、コピーライターの皆さんで、以前からの知り合いでもあります。

とはいえ、普段はロボットと縁もゆかりもない生活をしているので、どんな話の展開になるか、まったくわかりませんが、上映と併せて、こちらも是非、ご覧いただければと思っています。

(※)
赤坂真理氏(作家):夏に発売された小説「東京プリズン」は話題作であり、今年を代表する小説。映画「ヴァイブレータ」の原作者。
軍地彩弓氏(クリエイティブディレクター):現在、雑誌「VOGUE girl」に携わり、先日、NHKの番組でユーミンと沖縄に行く。
相川 藍氏(コトバカ):ファッション、化粧品など一流ブランドのコピーライター。月刊公募ガイド、Book Japanで書評などを担当。ヨーロッパ映画に詳しい。

2012年10月14日

ロボティック・ドラマの上映(1)

今週17日(水)から開催される「ロボットイノベーション2012」で、
ロボティック・ドラマ 第1幕 「Sex Bargain Robot」を上映します。

2010年4月に、横浜で上演した際に記録用に撮影しておいたビデオ映像を、今回上映するにあたって再編集し、音楽も入れ替えて、英語の字幕をつけました。

上演時に実機のロボットの動作や移動に時間がかかった部分を短縮した以外は、そのままの内容ですが、だいぶ印象が違うと思うかもしれません。

英語の字幕をつける作業は、アメリカ在住の友達に協力してもらったのですが、思った以上に時間と労力がかかってしまいました。

その理由として、
もともと映画用として書いたシナリオを、演劇用の台本に書き直したため、セリフがだいぶ長くなったこと。
夫婦の言い争いの場面では、役者のやりとりがどんどんテンポアップしてしまい、字幕が追い付かない部分があったこと。
コメディの雰囲気を出す微妙な言葉のニュアンス、言い回しが難しかったこと。

それらを、1秒12文字以内(スペースは数えず、大文字は2文字と数える)、1行40文字以内でひと画面2行まで、という字幕の基本ルールに乗っ取っておこなったので、なかなか苦労したのですが、上演時に撮ったビデオカメラの音声をそのまま使っているのと、当日は風が強く、時折風切り音が録音されていたため、一部聞きづらいセリフがあるのですが、字幕があることでその分、内容を理解するのには役だったかなと思っています。
(つづく)

「ロボティック・ドラマ」を横浜で上演します(2010.4.2)





2012年07月28日

女王陛下とブリティッシュ・ロック

パンクスピリッツ全開の「トレンスポッティング」を監督したダニー・ボイルが演出(しかも音楽監督はアンダーワールド!)しただけに、ロンドンオリンピックの開会式、楽しめましたね。

なにげに始まる市井の人々の暮らしの情景(まるで、ジオラマ!)、スピード感溢れるオープニング映像、ケネス・ブラナーによる格調ある朗読(シェークスピアの「テンペスト」)、ピンク・フロイドの「Animals」を彷彿させる巨大な煙突と、高炉によって作り出された「環」が五輪マークとなって、火花が放出されるなど、映像とライブをつなげた演出は、小気味よく、
エリザベス女王が上空からパラシュート降下したり、映画「炎のランナー」の演奏中のローワン・アトキンソンのコミカルな演技も、場をなごませます。

また、マイク・オールドフィールドの「Tubular Bells」から、ペット・ショップ・ボーイズの「West End Girls」、英国選手団入場時のデビッド・ボウイの「Heroes」(ロバート・フィリップのディストーションギターはやっぱりすばらしい!)など、これでもかのブリテッシュ・ロック好きには堪らない名曲のてんこ盛り。

そして、聖火が点灯された(秀逸!)後の花火と過去のオリンピック選手の映像のバックには、ピンク・フロイドの「The Dark Side Moon:狂気日食」が流れ、五輪マークが宇宙に浮かぶ。
と、間髪を入れず、ポール・マッカートニーによる「The End」のLive演奏が始まり、「Hey Jude」の大合唱で大団円を迎える(演奏がトチッたのはご愛嬌ですが)。

非常に緻密で、細部(小道具、衣装など)まで徹底的にこだわった構成と演出は、とても楽しめたし、
個人的には、英国の大選手団が入場して会場が最高潮に盛り上がったときに、エリザベス女王が「時間が長くて、もう飽きちゃったわ」と、つまらなそうに爪を弄る姿がインサートされていたのが、いかにもイギリスらしい(まるでモンティ・パイソン?!)ウィットが感じられて、よかったですね。

それにしても、
各国選手団が華やかな民族衣装や、「サルヴァトーレ フェラガモ」(サンマリノ共和国)、「ラルフローレン」(米国:縫製が中国製だと、だいぶイチャモンがつきましたが)など、趣向を凝らしたユニフォームを着る中、日本選手団の相も変わらずのそのセンスの無さ。

どうしてこうなってしまうのだろう。
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2012年06月30日

ロボティック・ライフスタイル・ニュースクリップ 2012.6

2012年6月のロボティック・ライフスタイルニュースをまとめて。。。

<ロボティック ミッション>

・宇宙空間から大気圏に再突入し、データを収集する装置を開発(IHIエアロスペース)

<ロボティクス>

・7月にロボットビジネスセミナーを開催(神奈川県など)
・サービスロボットの実証実験の計画を7月に募集(神奈川県など)
・安価なセンサーを大量に供給できる全印刷フレキシブル圧力センサーを開発(産総研と味の素)


ロボティック・ライフスタイル・ニュースクリップ 2012.5(2012.6.2)

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2012年06月02日

ロボティック・ライフスタイル・ニュースクリップ 2012.5

2012年5月のロボティック・ライフスタイルニュースをまとめて。。。

<ロボティック・カーサ>

・ロボット家電「COCOROBO(ココロボ)」発売(シャープ)

ロボティック・ライフスタイル・ニュースクリップ 2012.4 (2012.5. 2)

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2012年05月31日

日本人の幸福

自分で起業して思うのは、さまざまな「休み」の理由により、なんて仕事が進まないのだろうということ。

週休2日にはじまり、春の大型連休、年間15日もある国民の祝日、お盆休み、年末年始休暇、年度末有給消化、予算施行の遅延 ・・・

こちらは24時間365日の稼動体制でいるのに、「休まれる」ことで、その都度、仕事の流れや勢いが止められてしまう。

なにごとも皆一緒という日本人独自の感覚もあると思いますが、それにしても、と思います。

民主党は観光の振興を通じて地域経済の活性化や個人消費の拡大を図るため、秋に土曜日と日曜日も合わせた5連休を設ける方向で法改正の検討に入るようですが、これ以上、お金を使わすために一斉に休ませなくてもいいではないかと思います。

個人差はあるにせよ、ずっと現役で働き続けられる社会の実現こそ、日本人とっては幸せなことなのではないか。

現役のまま100歳で亡くなった新藤兼人監督は、独立プロであるがゆえに、映画制作資金に大変苦労する生活を過ごされたと思いますが、それでも誰もが「きっと幸せな人生だったのだろうな」と思う大往生だったのではないでしょうか。

対価の会心 (2009.4.22)

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2012年05月15日

大地の如き舞踊

先日、「ローザンヌ国際バレエコンクール」※の決選の模様が放送されました。

優勝した菅井円加の舞踊。
ニュースでは知っていましたが、他の出場者の舞踏と比較すると、力が抜きん出ていることが、良くわかりました。

それは、これまでの、例えば「白鳥の湖」に代表される、優美でしなやかで、ガラスのような繊細なイメージとは異なり、
力強く、のびやかで、情感のこもった表現と、
大地からの沸き出たような、生命力に満ちあふれた演技。

なにより、観客の心をぐっと引き寄せ、是非Liveで観てみたい!と思わせる「個」の力を感じさせます。

「次世代のバレリーナ」とTV解説で評していましたが、まったく同感です。
これからどんな成長をするか、とても楽しみです。


※15〜18歳だけが参加できる若手の登竜門として知られ、クラシック・バリエーションとコンテンポラリー・バリエーションの2つの課題で競う。
2011年は予選(映像審査)に30カ国226人が応募。本選には19カ国・79人が参加し、決選に21人が進出。日本の高校2年生・菅井円加がスカラシップ賞(最高賞)とコンテンポラリー賞を受賞した。
posted by カーサ at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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